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会計・税務及び経済関連(時々雑談)

相続税法と民法(3/3)

借金などが多かった場合どうするか

相続は、被相続人の死亡により開始し、被相続人の一切の権利義務を承継させるものですが、必ずしも権利(プラスの財産)だけを相続できるとは限りません。そこで、民法では、相続人が相続財産を承認するか、放棄するかを考える熟慮期間を与えています。この期間は、「相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」であり、その期間内に「承認」又は「放棄」の意思表示をしなければなりません。

 

承認

(1)単純承認

単純承認とは、無制限で権利・義務を承継することをいいます。

 

(2)限定承認

限定承認とは、承継した権利の範囲内で義務を承継することをいいます。積極財産より消極財産が明らかに多い場合には、相続放棄をすればよいのですが、どちらが多いか分からない場合もあります。このような場合には、消極財産を積極財産から弁済し、債務超過の場合であっても相続人自身が弁済する責任を負わないというのが限定承認です。

 

放棄

相続の放棄とは、相続権を放棄することです。相続を放棄しようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。相続の放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなします。被相続人の残した積極財産よりも消極財産の方が多い場合には、相続を放棄することによって、被相続人の残した借金を返済する必要がなくなります。

 

手続

「限定承認」及び「相続放棄」をする場合には、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。ただし、「単純承認」をする場合には、特に必要としません。

なお、民法では986条に「遺言者の死亡後、いつでも」放棄できると規定されています。相続の放棄は相続の開始があったことを知った時から3か月以内と決められていますが、遺贈の放棄についてはいつでも放棄できることとなっているため、遺贈の放棄をする者がいるのかいないのかが定まらず、財産の権利関係が不安定な状態が継続してしまいます。そこで、民法987条において、特定遺贈を受けた受遺者に対して、一定の期間内に遺贈の承認か放棄をすべき旨を催告することができると規定しています。その期間内に受遺者がいずれかの意思表示をしないときは、遺贈は承認されたものとして処理することになります。