ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

日テレの決算書を覗く

前回はフジ・メディアHD(フジテレビ)の第2四半期決算を覗くと共に、「CM撤退ラッシュ」や「都市開発・観光による稼ぎ」を取り上げた。

 

今回は同じ民放キー局でもトップクラスの広告収入と番組視聴率を誇る「日本テレビホールディングス(日テレ)」を見てみる。

 

結論としては、地上波スポット広告の回復海外番販・アニメなどのコンテンツ事業が日テレの業績を押し上げ、中間期で大幅な増収増益を達成している。

 

さらに政策保有株の縮減による売却益も寄与しており、フジテレビとは異なる形で「好決算」を維持しているのがポイントだ。

 


1. 2024年度 第2四半期決算——売上ではフジ、利益では日テレが上回る

まずは、両社の「2024年度 第2四半期(2024年4~9月)」の決算をざっくり比較してみる。

 

絶対額としては、以下のようにまとめられる。

1-1. フジ・メディアHD(フジテレビ)

  • 売上高2,681億円(前年同期+0.2%)
  • 営業利益138億円(+6.6%)
  • 親会社株主に帰属する中間純利益126億円(+25.4%)

どんな特徴があったか

  • 都市開発・観光部門(サンケイビル、グランビスタ)の好調が際立ち、グループ全体を押し上げる構図。
  • メディア・コンテンツ部門は若干マイナス売上だが、配信広告などの伸びで増益確保。
  • 「中居騒動」やスポンサー撤退リスクが経営上の大きな課題として表面化。

1-2. 日本テレビホールディングス(日テレHD)

  • 売上高2,168.7億円(前年同期+10.6%)
  • 営業利益211.4億円(+25.9%)
  • 親会社株主に帰属する中間純利益159.7億円(+16.5%)

どんな特徴があったか

  • スポット広告が6月以降プラス転換し、広告収入全体で増
  • コンテンツ事業(アニメ、映画、海外番販)やジブリ関連イベントの収益が大きく上乗せ。
  • 政策保有株の売却益(43億円)も利益寄与し、中間期の営業利益・純利益ともに高水準に達した。

1-3. 絶対額の比較

  • 売上高:フジ(2,681億円)> 日テレ(2,168.7億円)
  • 営業利益:日テレ(211.4億円)> フジ(138億円)
  • 中間純利益:日テレ(159.7億円)> フジ(126億円)

つまり、売上規模だけならフジテレビの方が大きい(不動産・観光などの複合事業で稼ぐ構造が効いている)。

 

一方、利益面では日テレが明確に上回るという対照的な結果が見える。

 


2. 日テレの中間決算を詳細に見る:広告回復×コンテンツ海外展開

2-1. 広告収入

4~5月は前年割れだったスポットが、6月以降プラスに転じて「+2.7%」。

 

タイムは-2.2%と微減だが、特番などで巻き返しを狙う。

 

地上波の視聴率シェアが高いため、日テレはスポンサーから選ばれやすい状況が続くというわけだ。

2-2. コンテンツビジネス

  • スタジオジブリ:宮﨑駿監督作や舞台版『となりのトトロ』の海外展開など、大型IPイベント化に成功。
  • アニメ:『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』が配信・海外番販でヒット。
  • IPビジネス:SKY-HIらとのコラボプロジェクト(D.U.N.K.など)が興行面で成功。
  • 映画:『キングダム』や『矢野くんの普通の日々』など、ヒット作を継続的にラインナップ。

2-3. デジタル・配信

  • Hulu:Disney+セットプランやオリジナルドラマ強化で会員増。
  • TVer:地上波バラエティ・ドラマのアーカイブを大放出し、月4~5億再生とAVOD広告収入が急伸。

3. フジとの違い:不動産×観光がフジ、海外番販×配信が日テレ

今回の比較で改めて分かるのは、両社ともに「放送と広告」以外の稼ぎ方を模索しているものの、実際の伸び筋が異なるという点だ。

  1. フジ(FMH)

    • 都市開発・観光(サンケイビル、グランビスタ)で大きく増収増益。
    • メディア部門は配信広告が激増(+74.7%)しつつも、CMスポンサー撤退リスクやイベント反動減など、やや課題も。
  2. 日テレ(HD)

    • 広告復調による広告収入増とコンテンツ販売・海外番販の好調で、営業利益は200億円超
    • 映画やアニメ、ジブリIP、さらにHulu・TVerといったデジタル領域を駆使して収益源を増やしている。

不動産・観光で稼ぐフジ vs. コンテンツ海外展開で稼ぐ日テレという構図がはっきりし、広告リスクが顕在化するフジに対して、日テレは比較的スポンサーの信頼を維持している状況と見える。

 


4. 今後の焦点:広告市況、ガバナンス、投資戦略

  1. 広告市況

    • フジは「中居騒動」以降のスポンサー離脱が一部報じられており、中長期的にどう影響するか不透明。
    • 日テレは視聴率シェアが高く、当面は広告面で優位と見られる。
  2. 複合事業の行方

    • フジの都心再開発や観光事業のさらなる展開
    • 日テレの海外番販&IP事業拡大、Hulu事業の黒字化・拡大
    • それぞれが「本業以外」での収益アップをどこまで伸ばせるか。
  3. ガバナンス・株主還元

    • 両社とも自己株買い・政策保有株縮減を進め、ROE向上へ。
    • フジが外部株主(ホリエモンら)をどう迎え、スポンサー撤退問題への対応策を示すか注目点。
    • 日テレは、広告収入が堅調なうちに海外IP投資やDX投資をどこまで攻められるか。

まとめ:フジは売上の絶対額が上、日テレは利益面で圧勝

絶対額で見ると、フジ・メディアHDは売上2,681億円と日テレHDの2,168.7億円を上回る。

 

しかし、営業利益はフジの138億円に対して日テレが211.4億円と、日テレが大きく上回る結果だ。これは、

  • フジ→売上の大きな部分を不動産・観光が担い、広告部門の伸びは限定的
  • 日テレ→地上波広告が回復し、コンテンツ海外販売やジブリ・アニメ、配信まで含めた高利益体質

という構造の差が如実に現れていると言える。

 

フジテレビが不動産収益の「安定感」を武器に増益を確保する一方、日テレはコンテンツビジネスで「攻め」に出る形で広告と海外展開を伸ばしている状況だ。

 

フジの「CM撤退ラッシュ」や日テレの政策保有株売却で得た資金の使い道など、各社がどんな経営戦略を打ち出すかに注目が集まるだろう。