ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

中世における渡来銭の流入と手形の発達(1/3)

10世紀中頃を最後に日本での貨幣鋳造が中断すると、11世紀初頭に銅銭の流通は途絶え、以後12世紀中頃まで米や絹布を貨幣に換算して交換手段とする商品貨幣の時代が続きました。12世紀後期に日宋貿易により宋銭が大量に流入すると、商品貨幣である米と絹布の…

中世における対中国貿易と東アジア経済(4/4)

16世紀中頃の大内氏滅亡を画期として日明貿易は衰微し、再び倭寇の非合法活動が盛んになり、彼ら後期倭寇は、銀を新たに交易品に加えました。東アジアでは、16世紀初頭に朝鮮で銀山開発が進み、その銀が日本や明へ流入しましたが、1540年代以降は日本で急速…

中世における対中国貿易と東アジア経済(3/4)

中国では14世紀後半に元が北方へ退き、漢民族により明朝が開かれます。永楽帝は積極的対外政策をとり、鄭和に南海遠征を行わせるなど、周辺諸国に優位性を誇示し朝貢関係を求めました。朝貢とは、服属国(周辺諸国)が宗主国(明)に対して定期的に使節を送…

中世における対中国貿易と東アジア経済(2/4)

東アジアの政治情勢は、13世紀初頭のモンゴル帝国の台頭で大きく変化しました。モンゴルは、ユーラシア全土にまたがる大帝国を築き、中国では「元」を建国して海上交易へも積極的に乗り出し、新都「大都」の中心部に人口の港を建設し、運河で海に接続しまし…

中世における対中国貿易と東アジア経済(1/4)

近年では、古代から中世への移行期を院政期(11世紀末~13世紀初頭)に求める見方が主流です。この院政期に、対内的には荘園制が確立し、対外的には日宋貿易が展開され、渡来銭の大量流入が始まりました。平安時代の貿易は大宰府を中心とした管理貿易が主で…

産業分析から見る生産ネットワーク(6/6)

フラグメンテーションは「生産・物流ネットワーク」の存在が必要不可欠となりますが、部品やアプリケーションを供給するサプライヤーの分厚い集積を生み出し、産業を構成する工程が細分化され、個々の工程がそれに適した地域や国に割り当てられる形で生産さ…

産業分析から見る生産ネットワーク(5/6)

日本経済新聞(2020年11月21日)の記事によると、iPhone 12の主要な部品について、アメリカ企業であるアップル(メイン半導体)、韓国企業であるサムスン(有機ELパネル、フラッシュメモリー)、SKハイニックス(DRAM)、日本企業であるソニー(カメラ部品(…

産業分析から見る生産ネットワーク(4/6)

高機能型携帯電話(フィーチャーフォン)、およびこれから発展した情報通信端末であるスマートフォンの合計年間出荷台数は、2018年に約17億台に達しています。ハイテク技術の塊であり、高価な財でもあるフィーチャーフォンやスマートフォンが、先進国のみな…

産業分析から見る生産ネットワーク(3/6)

携帯電話及びスマートフォンの生産について歴史的な経緯を整理します。 1990年代半ば頃から、テキサス・インスツルメンツ(TI)やADI、フィリップス等の欧米の半導体メーカーが、ベースバンドチップ(信号処理部)、RF(無線部)といった中核チップセットと…

産業分析から見る生産ネットワーク(2/6)

2007年、アップルがアメリカでiPhoneを販売したことを機に、携帯端末産業ではスマートフォンにカテゴライズされる製品ジャンルの市場が急拡大を開始しました。「スマートフォン」に厳密な定義はありませんが、一般にはOSのバージョンアップやアプリケーショ…

産業分析から見る生産ネットワーク(1/6)

フラグメントとは、「断片」のことであり、フラグメンテーションとは、IT 用語で、断片化、細分化を意味します。また、日本大百科全書によると、フラグメンテーションは「一度に送信できないパケットを分割して送信する技術」をさし、経済地理学の視点からは…

現代日本企業の事例分析(11/11)

世界規模で拡大しながら、互いに交流し、学習をはかることで、イノベーションが期待できるのでありますが、そのためには、単に海外に展開するだけではなく、組織内部に学習メカニズムを整える必要があります。言語上の問題だけではなく、異文化理解も深い交…

現代日本企業の事例分析(10/11)

海外市場で一定の地位を築けば、国内よりもむしろ現地でシステム開発することが合理的である場合もあり、現地の優秀なエンジニアの獲得や、産業集積による地域特性の活用を狙って、サービス拠点に限らず開発拠点を海外に設置することも考えられます。場合に…

現代日本企業の事例分析(9/11)

赤字体質の課題を解消するには、国内市場においてある地位を築いた今、より多くの顧客を獲得するために、海外市場への拡大を図ることが求められます。グローバル展開する目的は、第1に規模の経済性の追求です。大規模な市場を獲得することにより、生産規模の…

現代日本企業の事例分析(8/11)

PayPayの現在の赤字体質の要因として、PayPayがサービスの展開を日本市場に限定していることによるユーザー数及び加盟店数の頭打ちの実情が考えられます。日本の人口は現在約1億2千万人である中で、PayPayのユーザー数は既に5,000万人を超えており、また日本…

現代日本企業の事例分析(7/11)

PayPayが現在直面している経営課題としては、健全な黒字体質に今後移行が出来るかという点であると言えます。確かに、ソフトバンクグループとしては、楽天経済圏に対抗するべく、PayPayをプラットフォームとして他のグループ企業のサービスを展開していくと…

現代日本企業の事例分析(6/11)

PayPayでは、積極的な広告宣伝活動及び高度なスキルを有する人材の獲得を通じて、後発ながら日本においてはQRコード決済事業におけるリーディングカンパニーの地位を築いたわけでありますが、冒頭に記載の通り大幅な損失が連続して発生している状況であり、…

現代日本企業の事例分析(5/11)

PayPayでは、2020年から現在に至るコロナ渦における外国籍の人材が日本に入国出来ないといった事態を受けて、全社員の原則リモート勤務を導入しています。(なお、同様の動きはソフトバンクグループ各社でも見られます。)これを可能にしているのが、会社全…

現代日本企業の事例分析(4/11)

PayPayの基幹システムは、インドのQRコード決済市場でシェアNo1のPayTMのシステムが基盤となっています。当該システム基盤をベースに追加開発(アジャイル方式)が行われているのでありますが、その開発には多くの優秀なエンジニアのマンパワーが必要となり…

現代日本企業の事例分析(3/11)

PayPayがサービスを開始した2018年時点では、楽天PayやOrigami Pay、LINE Payなど既に多数のQRコード決済会社が存在していました。その中で当時後発ともいえるPayPayがリーディングカンパニーに数年で躍り出たのはもちろん圧倒的なソフトバンクグループの資…

現代日本企業の事例分析(2/11)

PayPay株式会社(以下PayPay)とは、数年前から日本において積極的な広告宣伝活動によって普及してきているQRコード決済事業におけるリーディングカンパニーです。PayPayは、ソフトバンク株式会社とZHD株式会社の合弁会社として設立され、その後ソフトバンク…

現代日本企業の事例分析(1/11)

本日から複数回に分けて、「現代日本企業の事例分析」をしていきます。 参考文献は以下の通りです。 ・深化する日本の経営(千倉書房) ・ソフトバンクで占う2025年の世界(PHPビジネス新書) ・ソフトバンク株式会社2022年3月期有価証券報告書 ・PayPay株式…

会計の歴史的な変遷(5/5)

一方で近年では、国際会計基準(IFRS)の概念フレームワークからも明らかなとおり、収益費用アプローチから資産負債アプローチへの移行が見てとれ、上述した動態論から静態論へ回帰している面もみられます。資産負債アプローチとは、資産と負債を中心的な基…

会計の歴史的な変遷(4/5)

その後、資本と経営の分離が進み、近年では日本でもコーポレートガバナンスの意識が根付いてきており、村上世彰氏が賛否両論ありながらコーポレートガバナンスを訴えていた十数年前からも確実に変化をしていると感じます。資本と経営の分離が進むと、株主=…

会計の歴史的な変遷(3/5)

期間計算における利益の捉え方についても、歴史的な変遷が存在します。現在では資本と経営の分離についての意識は常識となっているところであり、経営者には株主への説明責任やコーポレートガバナンスが責務となっていることは浸透しているものの、過去は株…

会計の歴史的な変遷(2/5)

このようにプロジェクトごとの清算が必要である場合に適している現金主義会計から、その後変化が求められこととなりますが、そのようになった背景には、株式会社の存在があげられます。まず株式会社は、将来に渡って事業を継続するとの前提の上に成り立って…

会計の歴史的な変遷(1/5)

会計については、歴史的に様々な変遷を経て現在に至っており、各時代における会計に求められる役割に応じて変化してきています。また、求められる役割に応じて会計が変化するという点は、現代においても会計基準が、その目的に応じて企業会計基準、社会福祉…