ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

ローソンの決算書を覗く

KDDIによる、ローソンへの出資が報じられた。

 

その額、5,000億円。

 

これによって、ローソンは、三菱商事とKDDIの共同経営になるわけであるが、確かに総合商社と、デジタル通信が融合すればさらなる発展が期待出来る。

 

現代の生活に欠かせない、スマホとコンビニという事を考えれば、むしろ三菱商事よりも、KDDIの方がシナジー効果は高いとも思える。

 

消費者としては、その進化に心から期待するところではある。

 

ローソンは、個人的にスイーツのイメージが強く、また最近はチルド系や冷凍系の食品に力を入れている印象がある。

 

決して、業績不振という事はないはずではあるが、一方で、三菱商事がKDDIの出資を受け入れるという事は、それなりの危機感があったはずであり、その辺りを有価証券報告書から感じてみたいと思う。

 

 

ローソンの設立は、1975年。

 

セブンイレブンの1号店が出店したのは、1974年であるから、ほとんど同時期に設立及び出店がされている事になる。

 

そして、親会社は当時、大きく躍進していたダイエーである。

 

その後、三菱商事に親会社が代わる事になるのだが、バブル崩壊後、経営不振に陥っていたダイエーからしたら忸怩たる思いがあったに違いない。

 

一方で、良きタイミングでしっかりとコンビニ業界に参入してくる所が、三菱商事の強さである。

 

 

ローソンのセグメントは、「国内コンビニ事業」を軸に、高価格帯のスーパーで有名な「成城石井事業」、さらには、チケットの販売等を手掛ける「エンタテイメント関連事業」、ローソン銀行を展開する「金融事業」がある。

 

もちろん、海外のコンビニ展開も進めており「海外事業」も認識されている。

 

 

ローソンの売上は、やはり「国内コンビニ」が圧倒的に大きい。

 

そして、2023年2月期に大きく売上が増加しているように見えるが、これはIFRSへの移行に伴うものである。

 

 

2022年2月期をIFRSベースに置き換えた場合には、売上高は微増にとどまる事が分かる。

 

 

基本的には、売上を総額で計上するか、純額で計上するかという差であり、IFRSへの移行に伴う「認識・測定の差異」で、営業総収入と売上原価がそれぞれ増加しているのは、純額⇒総額への計上となっていると考えられる。

 

 

セグメント利益で見ると、「国内コンビニ」の利益が、2021年2月期に落ち込み、2023年2月期には回復している事が分かる。

 

まず、2021年2月期の落ち込みは、やはりコロナ影響である。

(2021年2月期)

 

外食業界等と比べれば、コンビニ業界は比較的影響は小さいものの、それでもやはり客足に影響した事が読み取れる。

 

(2023年2月期)

 

そして、2023年2月期にコロナ影響の縮小に伴って、業績回復している事が分かる。

 

(2023年2月期)

 

「日販(にちはん)」というのは、業界用語で「コンビニ1店舗当たりの1日の売上」の事を言うらしいが、客数の増加及び、客単価の上昇に伴って、日販も増加している。

 

(2023年2月期)

そして、これは単にコロナが収まってきたというだけではなく、様々な改善プロジェクトの成果である事が分かる。

 

こうした、経営層の意識が、KDDIとの連携にもつながっているのだろう。

 

改めて、三菱商事を含めたローソンの経営層の、意識の高さに感服する。

 

一方で、「海外」の利益がマイナスとなっているが、店舗数の推移を見ると急速に海外店舗数が増加しており、今は先行投資のタイミングなのかもしれない。

 

 

国内の店舗数の安定推移と比較すると、その増加トレンドがより分かる。

 

 

(2023年2月期)

 

今後、コロナ影響がさらに小さくなれば、大きな収益の柱に成長する余地が十分にある。

 

そして、中国はキャッシュレス決済が進んでおり、より通信やデジタルとの親和性も高い。

 

そういう意味でも、KDDIとの連携は活きてくるに違いない。

 

 

なお、ローソンは、直近の2023年8月期(第2四半期)においても、しっかりと業績を伸ばしている。

 

(2023年8月期_第2四半期)

 

 

そして、継続して「日販改善」に努めており、その成果がしっかりと出ている。

 

こんな、常に危機感を持って、改善を続けるローソンが、このタイミングであえてKDDIの出資を受けるというのも、頷けてきた。

 

上述の通り、ローソンと言えば個人的には、スイーツの印象が強いのだが、今後はローソンの横にAUショップができて、待ち時間にスイーツのクーポンが付与されてローソンのイートインスペースでお茶をしながら待つ日が来るかもしれない。

 

そして、多くのシナジー効果により、KDDIがドコモを、ローソンがセブンを、ポンタポイントが楽天ポイントを凌駕する日が来るかもしれない。

 

その競争は、消費者にとっては望ましい事であり、何よりワクワクしてならない。

 

今後の進化が楽しみだ。