ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

セブン&アイの決算書を覗く

セブン&アイが「そごう・西武」を外資系ファンドへ売却をするにあたって、西武池袋本店でストライキが発生している。

 

自分は、横浜に住んでいるので池袋本店のストライキは直接の影響は受けないが、横浜のそごうが営業を停止したらそれなりに困るなと思っている。

 

「そごう・西武」がヨドバシカメラと関係が強い外資系ファンドに売却されることを発端とした今回のストライキであるが、確かにヨドバシカメラはヨドバシカメラで大変お世話になっているものの、そごうに行ったら半分が電化製品売り場になってしまっていたらそれはそれで、「え~」となってしまうのもまた事実。

 

そごうに行くと、結構人で賑わっているように見えるのだが、確かに見ているのは主に食料品売り場や飲食店が多かったかもしれない。

 

そんなに、窮地なのだろうか、セブンイレブンは明らかに好調のように思えるのだがどうなのだろうか。

 

「そごう・西武」のストライキが良い方向で決着することを祈りながら、この機会に株式会社セブン&アイ・ホールディングスの有価証券報告書を覗いてみようと思う。

 

 

セブン&アイの中核は、そのロゴからも分かる通り、セブンイレブンとイトーヨーカ堂である。

 

また、セブンイレブンは、元々イトーヨーカ堂がアメリカでセブンイレブンを展開するサウスランド社とライセンス契約を締結して、日本で営業を開始している。

 

 

それから、時が経ち、セブンイレブンはイトーヨーカ堂と肩を並べる企業に成長し、さらに凄いのは、ライセンス契約を結んでいたアメリカのサウスランド社を2005年、逆に買収してしまったということである。

 

例えるならば、日本のマクドナルドが、アメリカのマクドナルド本社を買収してしまうようなものだろうか。

 

イトーヨーカ堂が、セブンイレブンの事業に乗り出していなかったら、ダイエーのようになっていたかもしれない。

 

セブンイレブン初代社長であり、セブンイレブン事業を推進した伊藤雅俊氏の功績は計り知れないものがある。

 

そして、今回話題になっている「そごう・西武」を2006年グループ傘下に入れている。

 


セグメント認識であるが、セブンイレブンを展開する「国内外のコンビニ事業」、イトーヨーカ堂を展開する「スーパー事業」、セブン銀行等を展開する「金融事業」、そして話題の「百貨店・専門店事業」である。

 

なお、このセグメント認識であるが、2023年2月期の有価証券報告書において、既に衝撃の記載が見られる。

 

 

そう、2024年2月期において「百貨店・専門店事業」は、「その他の事業」行きが決定されているのである。

 

実際に宣言通り、直近の2023年5月期である第1四半期報告書では、「百貨店・専門店事業」がセグメント情報から消えている。

 

 

もちろん、今回の問題の発端になった外資系ファンドへの売却についても触れられている。

 

「お客様への提供価値及び事業価値の最大化を図ることは困難」と言い切ってしまっている以上、もう傘下で共に成長していくという選択肢はないのだろう。

 

ただ、「株式会社ヨドバシホールディングスをビジネスパートナーとして」という将来像が、恐らく従業員にイメージが出来ないということなのだろう。

 

それは、消費者の立場としても同じである。

 

やはり、ヨドバシが「そごう・西武」の展開する好立地の店舗を、求めているという風に見えてしまっているのだろう。

 

この辺りの説明がしっかりとされなければ、問題は長期化するのかもしれない。

 

さて、それではようやくではあるが、売上の推移を見てみる。

 

 

「スーパー」、「国内コンビニ」の推移は安定している。そして、「海外コンビニ」の売上が2022年2月期以降急増している。

 

この急拡大は、アメリカにおける「Speedwayブランド」にて展開するコンビニ事業及びガソリン小売事業のM&Aによるものであることが、有価証券報告書から読み取れる。

 

(2021年2月期)

 

買収価額は、驚きの2兆3千億円!!!!

 

そりゃ、急拡大もするだろう。

 

(2022年2月期)

 

(2023年2月期)

 

しっかりと、シナジーを出ているとの自信のコメントも見受けられる。

 

でも、ライセンス提供先であったセブンイレブン・ジャパンに買収されるほど困窮していたアメリカのセブンイレブンをここまでにしたのは、日本で醸成されたコンビニノウハウであるということも忘れてはならない。

 

そして、問題の「百貨店・専門店」は安定して右肩下がり。。。

 

 

ただ、2023年2月期の減少は、収益認識基準の適用により会計方針の変更(総額⇒純額)が生じたことに起因する。

 

 

利益の推移はどうであろうか。

 

 

セグメント利益で見ると、「国内コンビニ」が強い!!

 

そして、驚異的な売上の伸びを見せている「海外コンビニ」も、売上に比例する形でセグメント利益を伸ばしていることが確認出来る。

 

「百貨店・専門店」は・・・苦戦が見られる。。。

 

繰り返しにはなってしまうが、結構、食料品売り場や、飲食店は混雑しているのだが。。。

 

ちなみに、利益率でみると以下の通り。

 

 

「金融」の利益率が高いのは、どの会社も同じであるが、何と言っても「国内コンビニ」の利益率の高さは凄い。

 

フランチャイズの店舗も多数あるので、直接は当てはまらないが小売で25%以上の利益率は凄まじい。

 

値上げしなくてもいいんじゃないですか!?ってちょっと言いたくなってしまうのは野暮だろうか。

 

そして、利益率で見ると「海外コンビニ」は、それほど高くない。

 

「スーパー」の利益率も低い。

 

まあ、小売は薄利多売であるので、ある程度は致し方ないところではあるが、「国内コンビニ」の凄まじい成功事例をベースに改善を試みて欲しいものである。

 

なお、「百貨店・専門店」は・・・、まあ確かに厳しいですね。。。

 

2021年2月期とかは、コロナ影響もあるのでしょうが。。。

 

(2023年2月期)

 

ただ、直近では回復の兆しが見られ、利益も出ているのだが、外資系ファンドからの好条件のオファーがあったのだろうか。

 

確かに、コンビニとスーパーはシナジーが起こしやすいが、デパートとはなかなか難しいのかもしれない。

 

でもデパートで、「セブンプレミアム」の商品を大々的に販売しても良いと思うけど。

 

そういうことをすると、デパートに入っているテナントがいい顔しないのだろうか。

 

 

なお、話は「コンビニ事業」に戻るのだが、現在セブンイレブンは19の国に展開されている。

 

一方で驚くのが、北米の売上に占める割合である。

 

(単位:百万円)

 

日本を含め、19の国に展開しているのに、売上は圧倒的に北米なのである。

 

 

これもフランチャイズの店舗が含まれるので、あくまで参考値ではあるが、試しに、売上と店舗数を使って年間及び1日あたりの売上を出してみると、北米と日本で全然違う。

 

要因として考えられるとすると、北米ではガソリンスタンドが併設されている模様で、その売上も含まれるので単価が高くなる傾向にはあると思うが、こんなに高いだろうか。

 

そして、日本のセブンイレブンの1日の売上、こんなもんですかね。。。

 

日本は、フランチャイズの割合が多いから、ロイヤリティとしてはこの程度だけど、実際の売上はもっとあるとかそういうことかもしれない。

 

いずれにしても、北米の売上の高さには驚かされる。

 

そして、他社と同様にセブン&アイが力を入れているのが、「金融事業」を入口としたビジネスの展開である。

 

 

もうこれは、昨今の大手企業の鉄板と言って良いであろう。

 

つまり、消費者の財布を最初におさえて、そのお財布のお金を自社の経済圏の中で使って生活を完結してもらおうとしている。

 

あっ、セブン&アイさん、楽天モバイルどうですかね??

 

でも「Speedwayブランド」を2兆円で買収したばかりだし、年間の経常利益が5,000億円弱だから、今後数年間で1兆円の投資が必須であることを考えるとちょっと微妙ですかね。。。

 

何より、今は「そごう・西武」の売却問題をソフトランディングさせることが先決ですね。

 

確かに、「百貨店・専門店事業」の業績を見る限りは、現状でなかなかグループ内でシナジーを発揮するにも限界があるという経営判断は妥当なのかもしれない。

 

一方で、社会的にも影響がある事業であるのだから、大企業の責任として良い条件の先に売却して「さよなら」ではなく、売却先を選んだ理由をビジョンを含め説明して従業員、消費者を含む利害関係者を納得させる姿勢が望まれる。

 

恐らく、売却契約自体は、このまま遂行するのであろうから、その上で納得させる努力を継続することを願ってやまない。

 

また、そごうでスーツも買うようにするので、食料品売場と飲食店以外は電化製品売場みたいなことにはならないことをヨドバシにもお願いする次第である。

 

ヨドバシはヨドバシでちゃんと、重宝させて頂きますので。。。