ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

大丸松坂屋の決算書を覗く

「そごう・西武」の既存店舗の閉鎖はないという報道を受け、少し安心している中で、今後ビジネスパートナーとなるヨドバシカメラの有価証券報告書を見ようと思ったのであるが、なんとヨドバシカメラは非上場であるという事実を知り、驚いた。

 

親会社もなく非上場であれだけ、大規模店舗を展開出来るのだから、確かに経営能力は類まれなものがあるのだろう。

 

ビックモーターもそうだが、その資金力の源泉はとても気になるところである。

 

そう思いながら、そういえば「そごう・西武」も含め、百貨店は色々な業界再編がありながら今に至っており、その辺りこれまであまり気にしていなかったなと改めて思った。

 

合併しても、それぞれ既存のブランドで引き続き店舗運営をしているから、あんまり意識しなかったのかもしれないが、実は色々と経営統合や合併をしているなと思う。

 

その中の一つが、自分の印象だと東京駅の八重洲に大きく店舗を構える「大丸」である。

 

「大丸」も「松坂屋」と合併をしており、株式会社大丸松坂屋百貨店となっている。

 

そして、松坂屋銀座店の跡地に開業した「GINZA SIX」も株式会社大丸松坂屋百貨店が展開する店舗である。

 

「GINZA SIX」は「百貨店はやらない」という方向で誕生したとのことで、そう考えると、別にこれまでの屋号にこだわった店舗展開ではなく、例えば高級家電と高級家具を取りそろえる店舗やシェアオフィス、さらには入場料を取ってテーマパークを「そごう・西武&ヨドバシ」が展開するのだって、あっても良いのかなともふと思ったりもした。

 

どうしても、「そごう・西武」の今後が気になってしまいながらではあるが、同業である「株式会社大丸松坂屋百貨店」の持株会社であるJ.フロント リテイリング株式会社の有価証券報告書を覗いてみようと思う。

 

 

正確な流れとしては、まず大丸と松坂屋が共同で持株会社を作って、その後完全子会社となった両社が合併したという流れの模様。

 

文字にするとたった数行なのであるが、同じ、百貨店事業を展開していたとはいえ、合併にあたっては企業文化も違うだろうし、人事面含め色々と困難があったのだろうと思う。

 

そういえば、海外ファンドから「そごう・西武」に役員が送り込まれるという報道を見たな。

 

当然と言えば当然の流れではあるが、従業員の方は気が気でないだろう。

 

また、「そごう・西武」の話になってしまった。。。

 

 

大丸松坂屋が認識するセグメントとしては、デパートを展開する「百貨店事業」、パルコに代表されるショッピングセンターを展開する「SC事業」、後は百貨店やショッピングセンターの不動産管理運営を行う「デベロッパー事業」、そして小売事業とは今や切っても切り離せないクレジットカード発行を行う「決済・金融事業」である。

 

 

やはり、「百貨店」が売り上げの大半を占める構図。

 

2021年2月期の下落は、間違いなくコロナ影響であろう。

 

なお、大丸松坂屋は、元々IFRS基準で決算を行っているため、高島屋のように日本基準の収益認識基準を適用した結果、売上が大きく減少するという推移は見られない。

 

なお、デベロッパー事業が2021年2月期から上昇しているように見えるが、これはセグメント範囲に変更があったことによるものであり、実質的には著増減はない。

 

セグメント利益はどうであろうか。

売上同様に、2021年2月期の苦戦が見て取れる。

 

「百貨店」は、2022年2月期も赤字となっている。

 

もう少し詳細に見てみよう。

 

(2020年2月期)

SC事業

 

2020年2月期において、「SC事業」の売上が増加しているが、これは渋谷パルコの保留床を売却したことに伴うものであり、一時的な影響であるとのこと。

 

(2021年2月期)

 

SC事業

 

2021年2月期は、「百貨店」も「SC」もコロナ影響で当然、ボロボロ。

 

大きい箱で展開していればいるほど、休業となった時の痛手は尋常ではない。

 

(2022年2月期)

 

2022年2月期の「百貨店」の売上は若干回復したものの、構造改革関連費用の計上によって依然として赤字。

 

ただ、苦しい時にこそ、手を打って今後に備えるというのは、体力がある会社だからこそ出来るわけで、経営判断として決して悪いとは思わない。

 

(2023年2月期)

2023年2月期は、V字回復とまでは言えないかもしれないが、業績の回復が見られ、セグメント利益も黒字転換している。

 

注目すべきは、いわゆるインバウンド需要の指標となる免税売上高の推移である。

 

期首である2022年3月には、コロナ前からの大幅な低下が見られていたが、1年後の2023年2月には順調に回復してきていることが分かる。

 

また、直近のデータである2023年5月期(第1四半期)でも、継続した回復が見られることも確認出来る。

 

さらに、興味深いデータとしては、コロナ前のインバウンド需要は8割以上が中国本土からの訪日客であったものが、直近では他の地域の構成割合も上がってきており、その上で中国本土からの訪日客の需要がさらに回復すれば今後の展開が期待出来る好材料になると言えるであろう。

 

(2023年2月期)

 

店舗別の売上増減率についても、2022年2月期と比して2023年2月期は、全店舗で確実に回復してきているのが分かる。

 

(2024年2月期計画)

また、2024年2月期の計画としては、コロナ前の水準により回復すると見込んでいることが確認出来る。

 

(2023年5月期 第1四半期)

 

実際に、2023年5月期(第1四半期)では、計画と比して堅調に推移していることが確認出来る。

 

大丸松坂屋に関してはインバウンド需要に左右される面も多いように見受けられ、コロナ前の水準に戻るのは、もう少し時間がかかりそうではあるが、インバウンド需要を除けば回復してきていると言える。

 

日本(少なくとも富裕層)の景気が悪くない今は、百貨店事業にとっては追い風であろう。

 

このタイミングで、ある意味強制的ではあるが、改革をすることになる「そごう・西武」の未来に期待する。

 

なお、改革と言えば、大丸松坂屋も現状に満足することなく、着々と将来に向けて投資を行っている模様である。

 

「不透明な時代を切り開き、未来を創る」というのは、会計事務所にもまさに当てはまることであり、背筋が伸びる。

 

 

大丸松坂屋は、なんとeスポーツ事業にも参入しているとのことで、デパートでeスポーツ会場が出来る日が来るのであろうか。

 

そう考えると、百貨店とヨドバシのコラボも決して、荒唐無稽な話ではないのかもしれない。

 

海外投資ファンドの詳細なビジョンが示される時を、心待ちにしている。