ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

産業分析から見る生産ネットワーク(2/6)

 2007年、アップルがアメリカでiPhoneを販売したことを機に、携帯端末産業ではスマートフォンにカテゴライズされる製品ジャンルの市場が急拡大を開始しました。「スマートフォン」に厳密な定義はありませんが、一般にはOSのバージョンアップやアプリケーションの自由な追加・削除、パソコンとほぼ同様のインターネット閲覧が可能な携帯端末を指します。2000年代後半以降、世界の端末台数に占めるスマートフォンの比率は急速に上昇し、2010年には24%、2015年には74%に達しています。

スマートフォン産業では、市場の拡大とともに、異なるアプローチによるものづくりを行う企業が現れました。スマートフォンというジャンルを創出し、その発展を先導したアップルは、独自のOSと専用チップを開発設計して魅力的な製品を次々と開発し、市場を開拓してきました。同社は、アップル・エコシステムの構築に多大な資源を投入する一方、製品の組み立ては、鴻海精密工業等の台湾系の受託生産企業に委託しています。つまり、スマートフォンは、市場から調達したコア部品、技術等を組み合わせることで設計が可能な財であります。そのため、その市場拡大は、部品やアプリケーションを供給するサプライヤーの分厚い集積を生み出し、産業を構成する工程が細分化され、個々の工程がそれに適した地域や国に割り当てられる現状、いわゆるフラグメンテーションが高度に発展しています。その結果、「台湾企業である鴻海精密工業が中国河南省鄭州に設立した工場で、世界各地から調達した部品を用いてアップル向けのiPhoneの受託生産を行う」といった分業が広範に行われているのであります。

 

産業分析から見る生産ネットワーク(3/6)に続きます。

 

参考文献

・東アジア優位産業(中央経済社

日本経済新聞