
社会福祉法人は原則として非営利性から法人税が課税されないと認識されがちだが、実際には収益事業(例えば介護保険や医療保険適用外のサービスなど)を行えば、そこで生じた所得に法人税等が課せられる。
こうした課税・非課税の両側面を抱える社会福祉法人では、会計上の利益と税務上の課税所得に差異が生じやすい。
そこで重要になるのが税効果会計だ。
今回は、社会福祉法人での税効果会計のポイントを整理してみよう。
1. 税効果会計とは
(1) なぜ必要か
企業の一般会計とは別に、税務では「課税所得」を算出し、そこに税率を乗じて納税額を求める。
一方、社会福祉法人には課税される事業と非課税扱いの事業が同居し、会計上計上した利益がそのまま課税対象になるわけではない。
費用や収益の計上タイミングが違ったり、非課税の売上が含まれる場合もある。
このズレ(差異)を調整し、将来の税金の増減を会計上見える化する手法が税効果会計だ。
たとえば将来「税金が減る見込み」があれば繰延税金資産を計上し、逆に将来「税金が増える見込み」があれば繰延税金負債を計上する。
(2) 会計上利益と税務上所得の違い
- 会計上の目的: 法人の適正な業績を把握
- 税務上の目的: 公平な課税を実現
同じ費用や収益でも、税法で認められるもの・認められないものがあり、結果として会計利益と課税所得には差が生じる(永久差異・一時差異)。
この差を埋めるために、税効果会計で繰延税金資産や繰延税金負債を計上し、損益計算書の税引後利益をより実態に近づける。
2. 税効果会計の適用プロセス
税効果会計の会計処理は、一般に以下のステップを踏む。
- 一時差異や永久差異を把握(会計上と税務上での資産・負債の評価差や損益計上タイミングの違いを区別)
- 法定実効税率の算定(法人税・地方法人特別税・住民税などを合算して何%かを求める)
- 繰延税金資産・負債を計算(一時差異×法定実効税率)
- 回収可能性(バランスシートに計上した繰延税金資産が将来減税効果を得られるか)を検討
- 財務諸表への表示(事業活動計算書や貸借対照表などにおいて、所定の区分で繰延税金を開示)
3. 一時差異の分類と繰延税金の計算
(1) 永久差異と一時差異
- 永久差異: 会計上は費用(または収益)だが、税務上は恒久的に認められないもの。例:寄付金の一部損金不算入、減免対象の収益等。これらは税効果会計の対象外。
- 一時差異: 期間のずれや評価差によって、一時的に会計と税務で扱いが異なるもの。将来的には税務上も費用(または収益)として認められる。たとえば減価償却の計上タイミングや、貸倒引当金の繰入時期など。ここが繰延税金資産・負債の主な発生源になる。
(2) 計算例
例えば期末に将来減税効果が見込まれる一時差異が1万円あり、法人税等の実効税率を30%とすると、繰延税金資産=1万円×30%=3,000円を計上する。
また将来増税効果がある場合には繰延税金負債を計上する。
4. 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は「将来、同額の課税所得があることを前提」に減税効果が見込める資産だ。
もし法人が将来赤字になり、課税所得が発生しないなら、実際には減税効果は得られない。
したがって、繰延税金資産を計上する場合は、その回収可能性を慎重に判定する必要がある。
5分類(スケジューリング可能か、経営計画の合理性はあるか等)に分けて判断し、見込めない場合は繰延税金資産を計上せずに当期費用に振り替える(取崩)処理を行う。
5. 財務諸表上の表示
税効果会計で認識した繰延税金資産・負債は、貸借対照表の資産・負債の部に計上される。
事業活動計算書(損益計算書)には「法人税、住民税及び事業税」の科目の次に法人税等調整額が表示されるほか、注記などで繰延税金の内訳を開示することが求められる。
社会福祉法人の場合も同様に、課税事業における法人税相当額を計上する場合には繰延税金対応の表示が必要になる。
まとめ
- 社会福祉法人も課税事業があれば法人税がかかる
収益事業に該当する活動から生じる所得には法人税等が課せられる。 - 会計利益と税務所得の差(永久差異・一時差異)を調整
税効果会計により、将来の税支払い増減を繰延税金資産(または負債)として認識し、当期の費用に反映する。 - 繰延税金資産の回収可能性が重要
将来課税所得が十分に見込めないなら、繰延税金資産を計上できない。見込みが変われば取り崩し・追加計上などが発生する可能性もある。
社会福祉法人には「非営利性」「公益目的」がある一方で、一部の事業では課税対象になるからこそ、税効果会計の導入や繰延税金の管理が他の法人と同様に重要となる。
財務状態を正しく把握し、将来の税負担を適切に見積もるため、会計と税務の橋渡しとなる税効果会計のしくみを十分理解しておきたいところだ。