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カメラやプリンターの「自前生産」が長年の企業文化だったキヤノンが、組み立て工程を一部外部に委託しはじめる。
さらに買収後に期待をかけていた医療機器事業では、大型の減損を計上してテコ入れを急ぐ。
こうした改革を踏まえ、キヤノンが発表した2024年12月期決算と2025年見通しをざっと確認してみる。
1.2024年12月期決算の概要
売上は好調だが、医療で減損1651億円
2024年12月期の連結売上高は4兆5098億円(前年比+7.9%)と過去最高を更新。
オフィス複合機やレーザープリンター、カメラなど主要事業が堅調で、最初の5カ年計画に掲げた4.5兆円超を1年前倒しで達成した。
一方、純利益は1600億円(前年比-40%)と大幅減。
これは主に2016年に東芝から買収したキヤノンメディカルシステムズ(医療機器部門)での「のれん」 減損によるもので、その金額は1651億円にのぼる。
中国市場での大型医療機器購入の先送りなどが響き、当初予定していた想定ほどの業績回復が見込めなくなった。

減損を除けば増益
メディカル減損を除いた営業利益は4449億円(+18.5%)、営業利益率は9.9%と前年から0.9ポイント上昇し、堅調さを維持している。
プリンティング(オフィス複合機やデジタル印刷機)やイメージング(カメラ、ネットワークカメラ)、半導体露光装置などは総じて伸びが続いた。配当は年間155円に増やす。
2.事業別トピック
(1)プリンティング
売上高は2兆5227億円(前年比+7.5%)で、デジタル商業印刷機やオフィス複合機のシェア拡大が貢献。
レーザープリンターは4Qだけで2桁成長し、部材不足の解消もあって台数面で回復が続く。
(2)メディカル
売上高5688億円(+2.7%)。
ただし利益面では減損の影響で最終大幅赤字に転落した。
中国の病院が高額機器購入を先送りしている動きや、国内病院の投資抑制が痛手。
2025年に向けては構造改革で約130億円を投じ、年100億円の利益改善を狙う。
(3)イメージング
売上9374億円(+8.8%)。
カメラ本体の高価格化やミラーレス拡大、ネットワークカメラが大きく伸びた。
4Qではネットワークカメラが前年比3割超の増収。
今後はBtoB向け高付加価値カメラでのさらなる収益拡大を見込む。
(4)インダストリアル
半導体用露光装置などが伸び、売上3565億円(+13.3%)。
FPD(フラットパネルディスプレイ)も回復傾向で、4Qは2割超伸長した。
2025年以降も「半導体露光装置・産業機器」を柱に成長を続ける計画だ。
3.2025年の見通し
5%増収・大幅増益、純利益は2.3倍見通し
2025年12月期は売上高4兆7360億円(前年比+5%)、営業利益5190億円(+16.7%)を掲げる。
純利益は3640億円(前期の2.3倍)を見込み、医療機器の減損を一巡させたうえでROEを10%超へ引き上げる方針だ。
また、自社株買い(最大1000億円)と5円の増配(年間160円)も発表した。
事業構造改革と生産外注
- 生産委託: 御手洗会長兼社長によると、プリンターやデジカメ下位機種などを中心に「ファブレス化」を進め、自前主義を転換する。
- 国内工場: 高付加価値製品や主力部品の設計・生産は国内に集約し、自動化や内製化をさらに推進。
- メディカル組織の一体化: 本社とキヤノンメディカルとの間で人員300人規模を移管、開発や営業を統合。年130億円の投資を2年間で行い、利益をテコ入れ。
4.財務指標とキャッシュフロー
在庫・CF
2024年末時点の在庫は3427億円と9月末比で500億円程度削減。2025年に在庫日数60日以下の最適水準を目指す。
フリーキャッシュフローは3095億円となり、自社株買い1000億円の余力を確保。2025年はさらに増加し3010億円を見込む。
ROE・株主還元
ROEは2024年9.4%(医療減損除けばそれ以上)となり、2025年は10%を超える見通し。
配当も160円に増やし、コロナ前の水準に戻す。自社株買いも含めて株主還元を強化していく方針だ。
5.まとめ
キヤノンは長らく掲げてきた「自社一貫生産」「生産技術を国内集中」という方針を一部見直し、海外委託やコスト効率化を急いでいる。
医療機器の減損という大きな痛手を受けたが、2025年12月期での売上5%増と純利益2.3倍(3640億円)の達成をめざす。
「メディカル事業革新委員会」による構造改革が成果を出せるか、海外生産委託や国内自動化がどこまでコスト競争力を底上げするか、キヤノンの次の5年は、この大転換が成否を握るといえそうだ。