ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

資生堂の決算書を覗く(2024年12月期反映)

「化粧品市場の変化は速い。そこについていけなければ、会社として立ち行かない」。

 

こう語ったのは、資生堂の藤原憲太郎社長(CEO)だ。

 

2024年12月期の決算は、売却した米国コスメブランドの回収不能リスクなどもあって4年ぶりの最終赤字(108億円)へと転落。

 

一時的要因とはいえ、中国市場の不振も利益を圧迫している。

 

しかし25年12月期にはなんとか60億円の最終黒字に回復すべく、構造改革やブランド再編への投資をさらに強化するという。

 


■2024年12月期:売却ブランド引当金が直撃

  • 売上高:9905億円(前年比+2%)
    中国と米州の伸び悩みを国内・欧州が補う形。ただし中国での落ち込み幅は想定をやや上回った。
  • コア営業利益:363億円(同-9%)
    トラベルリテール(免税品)や中国本土での消費減速が痛手となり、増収ながら利益率は下がった。
  • 最終損益:108億円の赤字(前期217億円の黒字)
    いちばん大きな理由は、21年に米ファンドに売却した3ブランド(「ベアミネラル」など)の売却対価回収が不能になる恐れが生じ、128億円の引当金を計上したこと。現金支出は伴わないが、一時的に最終赤字へ沈んだ。

▷中国市場の苦戦

コロナ後も景気回復が鈍く、「海南島の免税販売」は前年から3割以上落ち込み。

 

国内でも新規客の取り込みが弱く、中国全体の売上高は前の期から2割減。

 

もともと中国事業は資生堂の売上4割を占める基盤だったが、ここしばらくの「厳しさ」が明確に表れている。

▷国内は堅調、インバウンド需要も一助

国内の売上は好調。インバウンドも徐々に戻り、「クレ・ド・ポー ボーテ」「SHISEIDO」といった高価格帯ブランドの伸びが続く。

 

構造改革の成果でコスト効率も改善し、日本事業だけで営業利益は281億円を確保した。

 


■2025年12月期:わずかに黒字化へ

  • 売上高:9950億円(ほぼ横ばい)
    中国市場や米国の「Drunk Elephant」ブランドてこ入れを見込むが、大幅増収までは読めない。
  • 最終損益:60億円の黒字
    25年も引き続きグローバル構造改革費を約230億円計上するが、日本・欧州を中心に稼ぎを確保して、赤字からは脱却するとした。

▷世界的なコスト構造の見直し

24年は中国や日本での早期退職や不採算店舗撤退を進めた。

 

25年はさらに欧米やアジアでも不採算店舗の閉鎖や人員削減を行い、コストを一段と削減する。

 

26年には合計250億円のコスト削減を目指すという。

▷「コアブランド」への集中投資

社名を冠した「SHISEIDO」、高級ラインの「クレ・ド・ポー ボーテ」、メイクアップの「NARS」など3ブランドをコアに位置づけ、グローバル展開のため広告宣伝費や店頭販促への投資を大幅に増やす。

 

中国・米国向けには「Drunk Elephant」なども含め、選択と集中を図る。

 


■配当は40円に減額、「一刻も早い成長」を最優先

  • 24年12月期の配当は60円→40円
    業績悪化に伴い減配となった。25年12月期も同水準の40円を据え置く。
  • 中期的にDOE(親会社所有者帰属持分配当率)2.5%以上を目安とする方針には変わりないが、当面は「構造改革の完遂とブランド価値強化が急務」として株主還元は抑えるかたち。

■課題は「中国依存度の高さ」と「北米ブランドの立て直し」

  1. 中国市場
    コロナ以降、現地メーカーとの競争が激化する中、免税や店頭販売の落ち込みが続く。新政権が景気刺激策を打ち出すかどうかも不透明で、25年も回復を楽観視できない。
  2. 米国ブランド
    「Drunk Elephant」はデジタルマーケティング戦略の遅れから売上が減少。買収額が高額だっただけに早期立て直しが急務とされる。

とはいえ、国内は堅調でエイジングケアや高級スキンケアの新作投入が成功している。

 

欧州でのフレグランス事業も好調維持。

 

グローバルで見れば決して暗いばかりではない。

 


【まとめ】

資生堂は24年に4年ぶりの最終赤字へ転落。

 

しかしその主因は、米国ブランド売却に伴う一時的な引当金。

 

一方で、中国の長期的な需要減速・トラベルリテールの不振も無視できない大きなリスクだ。

 

25年は不採算店舗撤退やブランドの選択集中で再び黒字化を図るが、配当は従来より下げて40円を継続。

 

構造改革が「すぐに花開くか」は見えにくいが、インバウンドや欧州フレグランスなど、明るい材料もある。


結局のところ、中国依存度をいかに下げながら、北米ブランドの立て直しや新興国での拡大を進められるか。

 

これが25年・26年の本丸となりそうだ。

 

株主にとっては「配当回復にはなおしばらく時間がかかるかもしれないが、その分、再成長への布石を打てるか」注視したい局面だ。