
5年ぶりの営業黒字だけど大丈夫か?
楽天グループが2月14日に発表した2024年12月期の連結決算。
営業損益は529億円の黒字(前の期は2128億円の赤字)と、一気にプラス圏へ浮上した。
しかも、通期ベースで営業黒字になるのは実に5年ぶりだ。
一瞬「ホントに大丈夫?」と思う向きもあるかもしれないが、その背景には携帯電話(モバイル)事業の赤字縮小と、持分法適用が外れた米ASTスペースモバイルの株式再評価益約1000億円が大きく貢献したという要因がある。
端的にいえば、「携帯の収益改善+再評価による特別な押し上げ」が合わさって、表面的にはV字回復のように見えるわけだ。
ただし今回の黒字転換、すべてが特別利益のおかげというわけでもない。
モバイル部門の赤字幅はかなり縮んでいて、実際に数字として前進した面があるのは大きい。

携帯部門は依然赤字だが、ここにきて光明
いま楽天Gの爆弾扱いされているのが携帯電話事業。
安価な料金プランや大規模な基地局投資で、ECや金融で稼いだ利益を食いつぶす構図が続いた。
とはいえ24年12月期の携帯部門の赤字は2353億円(前期は3358億円の赤字)まで縮んでおり、赤字額ベースでは1000億円以上の改善。
契約数が24年末時点で746万件(1年間で26%増)に伸び、ARPU(1契約あたり月間平均収入)も104円上昇の2111円になったのが効いている。
さらに24年12月にはEBITDAベースで単月黒字を達成。
三木谷浩史会長のどぶ板営業で法人顧客や若年層をガッツリ取り込みに走った結果が少しずつ表れていると言えそうだ。
25年12月期は「モバイル通期のEBITDA黒字化」を目指すとのことだが、まだNTTドコモやKDDI、ソフトバンクなど大手3社に比べ契約数は大きく見劣りする。
次のハードルは「いかに1000万件の大台に乗せるか」、そこが勝負どころになりそうだ。
ECと金融は相変わらず堅調
一方のECや金融部門は相変わらずの好調ぶりで、24年12月期も二ケタ成長に貢献している。
ネット通販「楽天市場」や旅行予約の「楽天トラベル」は国内需要の回復を追い風に売り上げを伸ばし、楽天銀行などの金融セグメントも預金残高拡大や政策金利の上昇を背景に利益が拡大中。
この柱2本がしっかり稼ぐことでモバイルの赤字を補う。
そんな構図は今後も継続しそうだ。
もっとも、今回の黒字転換にはASTスペースモバイルの持分法除外で得た約1000億円の再評価益という臨時収入が含まれている。
もしこれがなければ、まだ通期営業赤字になっていたかもしれない。
なので、このままモバイル事業の赤字を縮め続け、評価益に頼らずに黒字を維持できるかどうかは注目だ。
「生成AI × 通信」で法人営業を強化
もう一つの動きとして、楽天モバイルが生成AIを使ったDX支援「Rakuten AI for Business」をスタートした点にも注目だ。
法人向けにAIチャットによる文書作成や翻訳、競合分析までワンストップで提供し、「通信回線とのセット営業」を仕掛けていく構え。
通信大手3社に比べて法人契約がまだ弱い楽天モバイルだが、若年層や中堅・中小企業の取り込みを軸に、一気に巻き返しを狙う姿勢が見える。
まとめ
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2024年12月期で5年ぶりの通期営業黒字
携帯赤字の縮小と、ASTスペースモバイル株の再評価益が効いた。 -
モバイル事業は依然2353億円の赤字
ただし契約数増とARPUアップで着実に改善。12月にはEBITDA単月黒字を達成し、25年12月期は通期黒字化を目指す。 -
EC・金融は引き続き二ケタ成長
「楽天市場」「楽天トラベル」などのネット事業、楽天銀行や楽天カードなどの金融事業は堅調で、モバイルの穴埋め役に。 -
生成AIのDX支援サービスで法人顧客を開拓
法人分野は他社が先行するが、「通信 × 生成AI」で後発ながらも巻き返しを図る。
数字だけ見ると「5年ぶりの黒字化」と手放しで喜びたくなるが、再評価益という特殊要因が大きいのも事実。
今後はモバイル事業がどこまで黒字転換を早められるか、そしてEC・金融との連携をさらに深められるかがカギになる。
少なくとも赤字地獄と揶揄されていた時期よりは一歩前進した楽天グループ。
2025年に向けて巻き返しを加速できるかどうか、注目しておきたいところだ。