ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

中世における朝廷・幕府・大名の経済政策(1/5)

 10世紀に入ると在地での荘園の形成に伴う領主的土地所有により、土地公有制は実質的に崩壊し、公有地からの税収に依存してきた律令国家は財政基盤を失い、そのため国家的プロジェクトである造営事業の経費をいかに確保するかが大きな課題となりました。

 荘園の成立には、任国に赴任した国司=受領が重要な役割を果たしましたが、受領は認知での権限から多くの収益を得ることができたため、私財を朝廷に献じて受領への任官・再任を求める動き(成功・重任)が盛んとなりました。買官にあたるこうした動きを当初は抑制していた朝廷も、10世紀に入り国家財政が苦しくなるなかで、成功・重任を利用して造園事業の経費を調達するようになります。当初、在官希望者が提供した資材は、「私物」でありましたが、それが制度化してゆく過程で、11世紀末には「官物」の一部を「成功」運動の費用に流用することが黙認されました。そして受領が主導し特定の経費を「官物」か「私物」かを問わずに賦課する一国平均役が生まれ、それが国家財政に取り込まれて中世王権が強化されました。12世紀には造営事業の経費を任国から賄うことを条件に国司に任官される造国司まで現れ、このような国家事業の経費を賄う目的で随時指定された令制の国を造営料国といいます。

 

中世における朝廷・幕府・大名の経済政策(2/5)に続きます。

参考文献

・日本経済の歴史(名古屋大学出版会)