ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

ホンダの決算書を覗く

トヨタ、日産と見てきたので、やはりホンダも見なければと思った。

 

ホンダと言えば、車と共にバイクのイメージも強いのではないだろうか。

 

ホンダは、やはり歴史ある会社で「Honda 原点コミック」なるものが、ホンダの公式サイトで公開されており、ホンダの成長の過程をマンガ形式で知る事が出来る。

 

こういった施策は、会社のファンを作るにも効果的だし、社員の愛社精神を醸成するためにも、非常に良いと個人的には思う。

 

「Honda 原点コミック」でも確認することができるし、また有名な話ではあるのだが、ホンダは、車よりも先にまずバイク、さらにそれより前に自転車用補助エンジンを販売している。

 

なお、この自転車用補助エンジンは、自転車に付けると「バタバタ」と音を出しながら走るので、通称「バタバタ」と言ったらしい。

 

 

これとそっくり一緒かどうかは、分からないのであるが、小学生の頃に信号待ちをしていると「バタバタ」というか、明らかに何らかのエンジン音がする自転車に乗って同じく信号待ちをしているおじいちゃんを見たことがある。

 

ちなみに、その時は思いっきり平成の時代であり、何ならまだ普及はしてはいないものの、電動自転車も世の中には存在していた時代である。

 

何か変な形をしているなとは思ったが、小学生の自分はまさか自転車にエンジンが付いているとも思わず、信号が変わって「バタバタ」と音を立てながら、おじいちゃんが自転車のスピードをグングン上げて走り去っていく姿は衝撃であった。

 

それこそ、未来の乗り物を見ている気分であった事を覚えている。

 

でもよく考えたら、あれは歩道を走ってはいけないのではないだろうか。。。

 

そんな事をふと思い出しながら、本田技研工業株式会社の有価証券報告書を覗いてみようと思う。

 

 

ホンダは、カリスマ経営者と言われた本田宗一郎氏が1946年に研究所を開設してから歴史が始まっている。

 

1933年にその歴史がスタートしたトヨタと日産よりも、若干遅いことが分かる。

 

 

ホンダが認識しているセグメントとしては、トヨタと日産同様に、まずは自動車製造及び販売の「四輪事業」と製品販売に伴う金融サービスを展開する「金融サービス事業」があげられる。

 

そしてホンダの特徴は、やはりバイクの製造及び販売の「二輪事業」があることである。

 

「自動車事業」ではなく、あえて「四輪事業」と言っている事に、個人的には「二輪事業」への深い思いを感じるところである。

 

さらに、「パワープロダクツ事業及びその他」というセグメントが認識されているが、主要な製品及びサービスにも「パワープロダクツ」と記載されており、これだけだと何だか分からないので、もう少し見てみよう。

 

 

「大型除雪機」「バッテリー交換ステーション」「自律移動モビリティ」等々があげられるらしい。

 

また、あの「ホンダジェット」もこの「パワープロダクツ」に含まれるらしい。

 

つまるとこと、「パワープロダクツ事業及びその他」=「その他」と考えた方が早いかもしれない。

 

それでは、売上を見てみよう。

 

 

バイクのイメージがあるホンダではあるが、売上高は圧倒的に「四輪事業」が大きいことが分かる。

 

 

なお、販売台数は、「二輪事業」の方がはるかに多い。

 

やはり、自動車とバイクだったら、自動車の方が販売価額がはるかに高いということの表れであろう。

 

そういえば、自動車だったら「カーシェア」、自転車だったら「サイクリングシェア」とよく見るが、バイクのシェアサービスはあまり見ない。

 

試しに「バイクシェア」でネット検索すると、自転車のシェアサービスが出てくる。。。

 

そうだった、英語では「バイク=自転車」だった。

 

営業利益は、どうであろうか。

 

 

なんと、営業利益は「二輪事業」の方が大きい。

 

さすが、歴史あるホンダの「二輪事業」である。

 

一方で、2023年3月期の「四輪事業」の赤字が気になる。

 

それにしても、どの自動車製造業の会社も「金融事業」が本当に安定している。

 

金融事業は、固定費が少額で済むということもあるが、例えば利息返還損失とか、巨額の貸倒損失等が発生しなければ極めて強いビジネスということであろう。

 

「四輪事業」の地域別の販売台数推移を見てみる。

 

 

「四輪事業」の連結販売台数については、トヨタと日産と同様に「北米」が大半を占める。

 

そして、「北米」における2020年3月期からの減少傾向も同じである。

 

「二輪事業」はどうであろうか。

 

 

もうほとんど「アジア」。

 

 

確かに、道路いっぱいにバイクが並んで走行するベトナムの朝のラッシュ映像等を、テレビで見たことがある。

 

なお、「二輪事業」も2020年3月期から2022年3月期にかけて減少傾向が見られる。

 

「四輪事業」及び「二輪事業」が、2020年3月期から販売台数を落としているその要因は、トヨタ、日産で見ているから知っている。

 

コロナ影響&半導体不足であろう。

 

(2020年3月期)

 

2020年3月期に「新型コロナウイルス感染症の拡大」のコメントが出現。

 

(2021年3月期)

 

2021年3月期には、「新型コロナウイルス感染症の拡大」に加えて「半導体供給不足」のコメントが出現。

 

(2022年3月期)

 

2022年3月期も同じ。

 

なお、原価側のコメントではあるが、「原材料価格の高騰」のコメントが出現。

 

(2023年3月期)

 

2023年3月期も基本的には同じで、「原材料価格の高騰」が「インフレ影響」に変わった感じ。

 

ここまでは、ある程度致しかたないところではあるのだが、心配なのは前述した2023年3月期の「四輪事業」の赤字転落である。

 

(2023年3月期)

 

色々コメントは、あるものの赤字転落についての要因を総じていうと、「販売台数の減少」と「諸経費の増加」の影響。

 

つまり、車の販売台数が固定費を回収出来ない、もしくはギリギリのレベルであり、さらに諸経費まで増加してしまったので、為替影響をふっ飛ばして赤字になってしまったということ。

 

(2023年3月期)

 

それでも、全体として営業利益を確保出来ているのは、何と言っても伝統ある「二輪事業」のお陰である。

 

(2023年3月期)

「二輪事業」は、メインの市場である「アジア」で2023年3月期で販売台数が上向きになってきている。

 

(2023年3月期)

中国は依然としてコロナ影響のためか減少しているものの、販売を牽引しているのは、インド、ベトナムらしい。

 

そして、注目すべきは、「二輪事業」の利益率の高さと、「四輪事業」の利益率の低さである。

 

その傾向は、コロナ前もコロナ後も大きな変化はない。

 

 

要因としては、両事業間における設備投資額の違いがあげられるのではないだろうか。

 

 

車の製造には多額の設備投資が必要であるということは、トヨタ、日産と同じである。

 

新発見は、バイクがいかに販売会社から見てコスパがいいかということ。

 

バイクの設備投資額は、車の1割程度であるのに対して、利益は車よりも多い。

 

ホンダは、車の製造販売でも、もちろん世界を代表する会社であるものの、やはりバイクの製造販売で圧倒的な世界No1企業なのである。

 

ホンダという会社の強さの神髄は、バイクにあると感じた。

 

(2024年3月期見通し)

 

 

2024年3月期は、さらに「二輪事業」の販売台数を回復させ(コロナ前95.6%)、「四輪事業」の販売台数も2023年3月期から増加に転じさせる見通しを立てている。

 

2023年8月9日に、2023年6月期(第1四半期)の決算情報が出ており、2024年3月期の見通しに対して順調なスタートを切っていることが確認できる。

 

(2023年6月期(第1四半期))

 

やはり、ホンダは「二輪事業」があれば大崩れすることは基本的にはないことが想定される。

 

この圧倒的に安定した収益力を誇る「二輪事業」があるからこそ、車やそれこそジェット機の開発まで出来るのであろう。

 

ホンダジェットは、小型ジェット機であり、主翼上面にエンジンを配置しているのが特徴的である。

 

値段は、約500~700万ドル(約6~10億円)ほどするらしい。

 

そして、2022年の時点で200機ほど売れているらしい。

 

全世界で200機だと意外と少ないなと感覚的に思ったが、ジェット機買える人なんてそんなにいないということだなと一旦納得する。

 

そういえば、実業家の前澤友作氏が、購入したホンダジェットの内装を全てエルメスにしたという動画を昔見た事を思い出した。

 

さらに、GMOの熊谷社長は、ホンダジェットを購入して自分で操縦していた。

 

この時点でもう2機だけど、ホントに全世界での販売台数が200機なんだろうか。。。

 

まあ、でも10億円だからな。。。

 

宇宙に行く人や、自分で飛行機の免許を取ってさらにジェット機を買えるような人は、世界的にも稀有ということなのだろう。

 

同じ日本人として、誇らしいではないか。