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会計・税務及び経済関連(時々雑談)

相続税法における信託受益権 (6/8)

受益者等の存しない信託

受益者等が存しない信託の効力が生ずる場合

贈与税又は相続税が課税される信託受益権の課税要件等は、次のとおりです。

 

「課税要件」・・・

・受益者等が存しない信託の効力が生ずる場合

・その信託の受益者等となる者がその信託の委託者の親族であるとき

 

「課税時期」・・・その信託の効力発生時

 

「課税対象者」・・・その信託の受託者

 

「課税財産」・・・信託に関する権利(信託受益権)

 

「贈与者」・・・その信託の委託者

 

「取得原因」・・・贈与又は遺贈により取得したものとみなす

 

信託法においては、受益者を定めずに「目的のみを定めた信託」を認めています。例えば、被災地の復興支援や地域の福祉向上のためなど、公益を目的とした信託の活用も期待できます。この信託では、受益者等が存しないことから「受益者課税」はできませんので「受託者課税」とし、その受託者には法人税を課すこととされています。この受託者への法人税課税は、その後存することとなる受益者等に代わって課税するという考えによるものです。したがって、その後において受益者等が存することとなった場合でも、特に課税関係は生じさせないこととしています。

 そこで、このような仕組みを逆手にとり、例えば、数年後に受益権が生ずる条件を付した信託(受益者:子)を設定することにより、贈与税最高税率:55%)ではなく、法人税(実効税率:約30%)の負担で済ませてしまうことが考えられます。贈与税法人税の負担差を利用した税負担の回避です。課税の公平を確保する観点からこのような税負担の回避に対応するため、受託者課税の際、将来、受益者となる者が委託者の親族である場合には、受託者に課される法人税に加えて贈与税も課すこととしました。ただし、受託者については法人税贈与税の二重課税が生じてしまうことから、贈与税額から法人税額を控除して、二重課税を調整することとしています。なお、遺言により委託者が受益者等の存しない信託を設定した場合には、遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税関係が生じることとなります。

相続税法における信託受益権 (7/8)に続きます。