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会計・税務及び経済関連(時々雑談)

相続税法における信託受益権 (1/8)

信託とは、「自分の財産を、信頼する人に託し、大切な人あるいは自分のために管理・運用してもらう制度」のことです。財産の管理・運用を「誰のために」「どういう目的で」ということを自分で決めて、信頼できる人に託すこと、それが信託です。財産を信託された人(受託者)は、信託した人(委託者)の決めた目的の実現に向けて信託された財産を管理・運用します。委託者から信託された財産(信託財産)の所有権は受託者に移転し、その信託財産は受託者の名義となって管理・運用されますが、信託が終了するとその信託財産は最終的に受益者が受け取ります。

このように、信託財産の実質的な所有者が受益者であることを踏まえ、相続税法では、信託が設定された時において、委託者から受益者に対して贈与があったものとみなして贈与税を課税することとしています。これを「受益者課税の原則」といい、信託を利用した経済的利益の間接移転による課税回避を防止することができます。

 

「委託者」・・・財産を受託者に移転し、信託目的に従い受益者のために受託者にその財産(信託財産)の管理・運用などをさせる者です。

 

「受託者」・・・信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理・運用及び信託の目的の達成のために必要な行為をすべき者です。

 

「受益者」・・・受託者からの信託行為に基づいて信託による利益の給付を受ける権利などを有する者です。

 

「信託財産」・・・受託者に属する財産であり、信託により管理・運用等の目的となる財産です。

 

「他益信託」・・・委託者と受益者が異なる人物の信託をいいます。

 

「自益信託」・・・委託者と受益者が同一人物の信託をいいます。

 

信託とは、委託者、受託者、受益者の三者の関係に基づく制度ですが、委託者自らが受益者になることもできます。このように、委託者と受益者が同一人物の信託を「自益信託」といい、これに対して、委託者と受益者が異なる信託を「他者信託」といいます。他益信託の場合には、信託財産の実質的な所有者が委託者から受益者に変わることにより贈与税の課税関係が生じますが、自益信託の場合には、信託財産の実質的な所有者は変わらないので、贈与税の課税関係は生じません。

相続税法における信託受益権 (2/8)に続きます。