もう一社、出版社について見ようと思ったのだが、どこがいいだろうかと悩む。
そもそも、上場している会社が少ないという事情もありつつ考えていたら、旅行系の書籍を展開している会社は出版不況に加え、コロナ影響も受けているのではないかと思った。
目に止まったのは、「まっぷる」や「ことりっぷ」を展開する株式会社昭文社ホールディングス。
地図や地理関連にこだわる姿勢には出版社としてのプライドを感じ、また「まっぷる」は、たまに旅行に行く際には、購入する事もあるので、親近感がわく。
どうだろう、業績は堅調だろうか。
まずは、全体の売上の推移から。
顕著な右肩下がり。。。
出版不況なのか、コロナ影響なのか、ちょっとそれを考える前に利益を見ることにしよう。
うーん、厳しい。。。
プラス情報としては、2023年3月期は売上が若干回復し、黒字転換していることだろうか。
まず、コロナ影響前の2019年3月期時点で、既に赤字。
グラフには出ていないが、2016年3月期から継続して売上も減少している。
なお、経常損失の額自体は、経費削減の効果で2018年3月期からは縮小している模様。
(2019年3月期)
2020年3月期は、売上が減少したものの、経常利益は黒字に転換。
まだ、明らかなコロナ影響は出ておらず、出版不況の中で人員整理を含めた構造改革を実施している模様。
(2020年3月期)
2021年3月期になり、大きくコロナ影響を受けていることが分かる。
売上高、経常利益共に激しく悪化している。
(2021年3月期)
2022年3月期も、売上はさらに減少している。
出版不況、コロナ影響に加え、2021年3月期に収益物件であった不動産を一部売却している影響が出ている模様。
(2022年3月期)
2023年3月期にようやく売上が、若干回復。
さらに、コロナ渦における構造改革の成果として、販管費が減少した結果、黒字に転換している。
(2023年3月期)
ただ、経常利益率は、4%程度と決して高い水準とは言えない。
プラス情報を見つけるためには、もう少し詳細に見る必要がありそうだ。
昭文社の事業としては、大きく分けて「メディア事業」と「ソリューション事業」。
「まっぷる」とか「ことりっぷ」は、「メディア事業」に含まれて、地図関連が「ソリューション事業」に含まれている。
2021年3月期には、「不動産事業」と「観光事業」もセグメントとして認識されていたが、2022年3月期からは重要性の観点から「その他」に含められている。
セグメント情報が、2021年3月期からしか取れなかったので、直近3年間の推移ではあるが、「メディア事業」は回復傾向が見られるものの、「ソリューション事業」はあまり回復が見られない。
営業利益も同じ傾向である。
確かに地図は、カーナビやスマホの無料アプリで十分事足りるし、自分も最近めっきり地図を買うことは無くなった。
最後に地図を買ったのは、中学生の時くらいかもしれない。
それに対して、旅行ガイドは、旅行に行く前の高揚感も相まって何となく買ってしまう。
旅行先で紙媒体だと何かと不便ではあるのだが、最近は電子媒体もあるので基本的には電子媒体で購入している。
そうだ、電子売上の割合はどうなっているだろうか。
2021年3月期の情報だけなぜか非開示であるのだが、基本的には上昇トレンドが見て取れる。
ちゃんと電子媒体に投資をしてきた事が、今後の希望になるのではないか。
これは、知らなかったのだが、「まっぷる」の電子書籍の読み放題も提供が開始されたらしい。
しかも、年額で数千円と良心的な値段設定であり、こういった取り組みは今後の業績回復の希望材料となるだろう。
数千円で読み放題だと、安過ぎないかと思ったが、旅行に行くのは大体年に数回だから、そう考えると購入されても年間数冊であり、妥当な価額設定かもしれない。
何より電子の良いところは、一度プラットフォームとコンテンツを作成してしまえば、原価はかからないことである。
つまり、読み放題にしたところで、追加のコストが発生するわけではなく、申し込み数が増えれば増えるほど、利益率の上昇が期待出来る。
(その分、紙媒体の売上の減少要因にはなるが、固定費を回収出来れば利益率は電子媒体の方が高いであろう。)
一人が年間で何十冊も買う事は稀である旅行ガイドと、親和性は高いと納得する。
そういえば、久しく旅行には行ってなかったが、そろそろ行きたいなと思ってきた。
その際には、「まっぷる」の読み放題の申し込みも検討しよう。
でも、年に3か所くらい行かないと元が取れない。
想像してみよう。
「まっぷる」の読み放題を申し込む。
頑張って、年間3か所くらい旅行にいく。
自分の知見が広がる。
昭文社が儲かる。
旅行先のホテル、観光地が盛り上がる。
日本経済が活性化する。
いいではないか、旅行ガイドの読み放題が経済を刺激する。
微笑ましい。