ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

HISの決算書を覗く

出版会社の決算書を見ていたら、旅行ガイドが目に止まり、分かりやすく旅行熱が上がってきたところである。

 

どこに行こうかと共に、どこの旅行会社を使おうかと色々と思いをはせる時間は何とも言えない幸せな時間だ。

 

しかし、コロナ影響で旅行会社は漏れなく大きな影響を受けていることであろう。

 

Go Toトラベルとか、全国旅行支援等の施策で、影響が最小限になっていれば良いのだが。。。

 

そういえば、エイチ・アイ・エスがハウステンボスを売却したというニュースを昨年(2022年)見たことを思い出した。

 

創業者の澤田氏も今年(2023年)会長職を退き、最高顧問となっている。

 

ドキドキしながら、株式会社エイチ・アイ・エスの有価証券報告書を覗いてみた。

 

 

エイチ・アイ・エスの事業は、やはり旅行・観光関連がメインである。

 

その他、電力の小売もやっているようだが、規模はそこまで大きくはないのではないかと想定する。

 

各事業の売上の推移をコロナ前から、見てみよう。

 

 

・・・。

 

想定していなかったわけではないが・・・。

 

基本的には、「旅行事業」が大半を占めている売上構成ではあるのだが、コロナ前の2019年10月期をピークに、2020年10月期、2021年10月期と今まで見てきたどの企業よりも、激しい下落である。

 

もはや、この状況で利益など出ているはずもないが、見てみる。

 

 

もちろん大赤字。。。

 

まあ、もしこれで利益が出ていたら明らかにおかしい。

 

各年度のコメントでは、もはや企業努力では何ともならない状況といった思いも感じてしまう。

 

だって、出入国制限やら外出自粛とかになったら、無理に決まってる。

 

気持ちはよく分かる。

 

2020年10月期

 

2021年10月期

 

2022年10月期

 

なお、2022年10月期から収益認識基準が適用になっているので、売上の認識について変更が生じている。

 

特にこれまで総額で売上計上していた「手配旅行」について、代理人取引と識別されたことで手数料見合いだけを純額で計上していることから、売上高は(旧基準)から(新基準)で大きく減少している。なお、この変更点については、売上の計上について総額を純額にしているだけなので、対応する原価は逆に計上されなくなるため、損益には影響はない。

 

そんな中、ほとんど「旅行事業」のインパクトにかき消されてしまっているが、実は「テーマパーク事業」は2022年10月期で唯一利益が出ている。

 

 

しかし、メインのハウステンボスは、2022年9月末で売却してしまっている。

 

なぜだ。。。

 

ハウステンボス再建に乗り出した2010年の澤田会長(当時)の姿が、思い出される。

 

役所に対して、固定資産税の免除を迫っていた光景は圧巻だった。

 

エイチ・アイ・エスの純資産の推移を見る。

 

 

2022年10月期時点での、純資産残高は56,636百万円。

 

これに対して、ハウステンボスの売却益は、40,842百万円。

 

 

そう、売却しないと近く債務超過に陥る可能性もあったということである。

 

もちろん、ある程度ハウステンボスの再建にも目途がついたという思いも実際にあるのであろうが、一方で財務状況を考えると売るしかなかったのかもしれない。

 

既に財務制限条項の②にも抵触しているようだが、ハウステンボスを売却していなければ①にも抵触していたと想定される。

 

 

欠損填補のため、減資も実施している。

 

 

もう、このくらいにしておこう。。。

 

プラス材料を2022年10月期の有価証券報告書から見つけることは、極めて困難だと思った。

 

そうだ、コロナは2023年5月から5類に移行したんだ。

 

その前から、徐々に行動制限の緩和も行われてきていた。

 

直近である2023年4月期(第2四半期)のデータがみたい。

 

 

 

まだ、5類に移行する前の2023年4月までのデータしかないのだが、確実に回復傾向にあることは分かる。

 

業績に対するコメントにも、少し希望が見えてきた感が受け取れる。

 

2023年4月期

 

九州でバス事業を行う「九州通交グループ」では、黒字転換が見られる。

 

 

「ホテル事業」も若干ではあるが、全国旅行支援の効果もあり黒字となっている。

 

 

恐らく、2023年10月期も依然として厳しい決算が予想されるが、確実に回復してきているのもまた事実である。

 

ここを耐え抜いて、2024年10月期、2025年10月期を飛躍の年として欲しい。

 

エイチ・アイ・エスの決算書を覗いて、心からコロナ後の未来に思いをはせる。

 

「1人でも多くの人に世界を旅してほしい」

「世界に出て感じた思いや気付きを自分自身や社会の中で、力に変換してほしい」

エイチ・アイ・エス創業者の澤田氏のコメントである。

 

旅行は、日常から離れ、新しい価値観を得ることが出来る。

 

ちょっと、すぐに世界は厳しいけれど、まずは国内で旅立つプランを考えよう。

 

その際には、エイチ・アイ・エスにお願いしたい気持ちは現状マックスであるのだが、他の旅行会社も同様に苦しいことが容易に想定される。

 

でも、エイチ・アイ・エス同様に、どこかに回復基調が見られるはずだ。

 

人は、少なからず旅行が好きなはずだから。

 

もう少しこの業界を見てみることにしよう。