ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

HISの決算書を覗く②(2023年10月期反映)

ついにと言って良いであろう、HISの2023年10月期の決算情報が開示された。

 

個人的には、前回決算書を覗いたHISがコロナ渦のどん底から、どこまで回復してきているか、ずっと気になっていた。

HISの決算書を覗く - ogurakaikei’s ブログ (hatenablog.com)

 

周りを見ると、もうマスクをしていない人も多いし、国内旅行であればハードルを感じる人は、既にほとんどいないのではないだろうか。

 

一方で、海外旅行となると、、、まだ少し抵抗があるかもしれない。

 

何となく、しばらく海外に行ってないから、まだ怖いという感じと、やはり円安の影響も大きいのではないかと思う。

 

さらに言えば、国内でも旅行に行けていなかったから、まずは国内でいいよねという思考になる傾向にあるのではないだろうか。

 

確かに、国内だって海外には負けないスポットがたくさんあるもので、それ自体は悪いことでは全くない。

 

ただ、それが旅行会社の決算にどう影響しているのかというのが、気にかかる所である。

 

胸の高鳴りが止まらないと言っても、言い過ぎでは本当にないのであるが、株式会社エイチ・アイ・エスの2023年10月期の決算短信を覗いてみようと思う。

 

まずは、売上である。

 

 

う~~ん。。。

 

主力事業である「旅行事業」は、コロナ前である2019年10月期の3割程度の回復といったところであろうか。

 

 

もちろん、前年比では大きく回復はしてきているものの、特に海外旅行の取扱高の回復が鈍い。

 

そして、訪日旅行取扱高の回復も、まだまだといったところである。

 

一方で、国内旅行の取扱高については、ほぼコロナ前の水準に戻っている。

 

「全国旅行支援」等の政府施策の効果もあるのであろうが、これを契機として今後は海外旅行にもつながる可能性があるのではないだろうか。

 

まずは、国内旅行にいって、そろそろ海外旅行に行きたいねとなるのが、自然な流れではないだろうか。

 

期待したい。

 

 

そして、営業利益については、コロナ渦での赤字幅がとてつもない金額規模なので、推移で見るとよく分からないのであるが、しっかりとどのセグメントも黒字転換している。

 

なお、「旅行事業」に次ぐ規模の赤字を出していた「エネルギー事業」は、撤退をしており、正確に言うとこちらは黒字転換ではなく連結除外となっている。

 

(2023年10月期)

 

 

営業利益、経常利益は約14億円とまだまだ、コロナ前の利益水準と比べると小さいのではあるが、一方で前期の500億円近い経常利益の赤字幅と比べると、本当に喜ばしい状況である。

 

前期の注記で開示されていた、財務制限条項への抵触についての記載もすっかり消えている!!

 

(2022年10月期)

 

(2023年10月期)

 

そんなこんなでようやく、営業利益が黒字転換したわけであるが、残念ながら最終利益は赤字のままとなっている。

 

その原因は、、、減損損失である。

 

 

せっかく、各セグメントが黒字転換しているのにと思ってしまうのであるが、そんな簡単な事ではないらしい。

 

 

やはり、海外拠点の業績が戻っていないのである。

 

グアムのホテルで約20億円、カナダで約6億円の減損損失の計上。

 

まあ、ただ見方を変えれば、これで会計上の手当はしてしまったということも出来るわけで、後は海外の取扱高が回復していくにしたがって、営業利益、経常利益幅が拡大し、最終利益も黒字転換する日も遠くないと言えるかもしれない。

 

(2024年10月期_計画)

 

しっかりと、2024年10月期は、最終利益の黒字を見込んでいる。

 

ようやく、そういうステージに来たかという安堵感と、ハウステンボスの売却など、痛みは伴ったものの、よく耐え抜いてくれたと思ってならない。

 

もちろん、まだまだ油断は出来ない状況ではあるものの、最高顧問となった創業者の澤田氏も少しはほっとしているのではないだろうか。

 

 

コロナで大きく毀損した純資産残高が、今後V字回復する日を願って止まない。

 

最近の旅行会社は毎月定額で積立が出来る会社が多く、HISもご多分に漏れず「毎月払いコース」があるのだが、そこで少しずつ積み立ててみようかなと思っている。

 

それには、もちろんHISの将来を信用しなければならないが、この積立金を示す勘定科目である旅行前受金の残高は、前期比で倍増している。

 

これが、世間のHISと今後の旅行への期待の現れなのであろう。

 

まずは、最低積立金額から検討したい。