先日、最新決算情報を反映して、鳥貴族の情報を更新したが、サイゼリヤも同じく最新決算情報を出している。
サイゼリヤは、2022年8月期時点では、コロナ渦からの業績の回復が見られたものの、国内の営業利益が依然として赤字であることが気になっていた。
サイゼリヤの決算書を覗く - ogurakaikei’s ブログ (hatenablog.com)
2023年8月期は、どうなったであろうか。
少なくとも周りの店舗で見れば、客足は完全に戻ってきているように感じてはいるのであるが。。。
緊張の瞬間である。
まずは、売上の推移。
極めて順調に回復しており、国内もコロナ前の水準を既に超えている!
そして、アジアの売上の伸びが顕著である!
結果として、売上合計は、コロナ前の約120%!
売上だけ見れば、文句ない業績である。
店舗数で見ても、国内は店舗数に大きな変化がない中で、売上が伸びているのであるから、確実に客足が戻ってきている証拠である。
また、海外は、店舗数が増加傾向にあるので、それに伴って順調に売上げが伸びている面もあるが、店舗数の増加率が2018年8月期比で約125%程度であるのに対して、売上の伸びは約180%にもなっている。
海外も、客足が回復しているという確実なデータである。
それでは、懸案の営業利益を見る。
あ~、国内は依然として赤字。。。
売上は、コロナ前を超えているのに、営業利益が戻っていないとなると、抜本的な対応が必要な可能性もあるから厄介である。
一方で、アジアの営業利益の伸びは凄い。
アジアは売上も大きく伸びているので、営業利益そのものが比例して伸びることは不思議ではないのであるが、営業利益率で見ても、国内とアジアの利益率は、全然水準が違うことが分かる。
アジアの営業利益率の水準が高いとも言えるが、そもそも国内は利益率がマイナスなのである。。。
なぜ、こんなに両セグメントで違いが出てしまっているのだろうか。
不思議に思いながら、サイゼリヤの決算説明資料を見ていて、衝撃の事実に気が付いた。
客単価が国内よりも海外(アジア)の方が高いのである。
(国内)
(海外)
店舗数が国内の方が圧倒的に多いので、客数はまだまだ国内の方が桁違いに多い状況ではあるが、客単価は2023年8月期で完全に抜かれている。
サイゼリヤが海外展開しているのが、物価がとても高いアメリカやヨーロッパであれば円安影響もあるし特に驚かないのであるが、展開しているのは中国、台湾、香港、シンガポールといったアジア圏である。
(2023年8月期)
営業利益の分析においても、国内では原価率が上がっている影響が大きく業績に響いていることが分かる。それが、労務費や設備費の改善から得られる前期比でのプラス要因を打ち消してしまっている。
一方で、海外は前期比で原価率はむしろ改善しているし、その上で労務費や設備費が改善しているので、極めて筋肉質な状況となっているのである。
原価は世界的に上がっているわけであって、ここで分かることは、それを客単価に転化出来ているかどうかという違いが、国内と海外で見られるということである。
端的に言えば、この状況はアジア各国で儲けた利益を、国内に還元してもらっている状況である。
何となく、感覚的にまだまだ日本はアジアでお金持ちであって、アジアの各国は人件費とか土地とかが安いから経費を抑えられて利益が出るものだという思いがあったが、この状況を見るとそんな単純な事ではない気がしてきた。
(2024年8月期計画)
来期の業績予想で、国内の黒字転換を計画しているものの、依然として店舗数が国内と比して明らかに少ないアジアの予想利益額には到底及ばない状況である。
容易に値上げをしないというサイゼリヤの姿勢には、本当に頭が下がる思いである。
よく飲食店を経営する方から、100円値段を上げるだけで、客足が大きく変わるという話も聞く。
値上げの判断がそんなに容易ではないことは、重々認識はしています。
お客様のために何とか値上げをしないで、踏ん張るという思いもあるのだろう。
しかし、さすがに原価率の改善のため、多少は値段に転化した方が良いのではないだろうか。
前は自由に使えた粉チーズは無くなってしまい、メニューもかなり少なくなった印象を受けている。
経費をより一層削るにしても、そろそろ厳しいのではないだろうか。
既存の商品の値上げは、どうしても。。。ということであれば、単価が比較的高い新商品を積極的に投入していくというのはどうであろうか。
後、サイゼリヤは予約が取れないのだが、一部予約を取って比較的単価が高くなるコースを展開するというのもどうだろうか。
仮に2024年8月期も国内が赤字であれば、5期連続赤字となる。
経費削減の努力には心からの敬意を表すると共に、是非、単価を上げる試みをして欲しいとサイゼリヤの1ファンとしては思いをはせる。