ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

DeNAの決算書を覗く

先日、横浜スタジアムに行ってきた。

 

有難い事にVIPルームだ。

 

改装後のVIPルームの素晴らしさについては、既に別の記事で記載しているので、詳細はそちらに委ねるが、やはり素晴らしいの一言。

 

部屋はクーラーが効いているので、夏場の日中でも全く暑くなく、気が向いたら屋根付きのバルコニーに出てバックネット裏から観ることが出来る。

 

やはり、唯一のネックは飲食があまりに高すぎて、ご馳走になる場合には恐縮してしまうことだろうか。

 

横浜スタジアムの株式をDeNAが取得したのが、2016年1月。

 

そこから、増築・改築が断続的に行われ、本当に横浜スタジアムは見違えた。

 

そんなDeNAに感謝をしつつ、株式会社ディー・エヌ・エーの有価証券報告書を見てみようと思った。

 

やはり、会社として機動力があるということか、「ゲーム事業」をベースにしながらもセグメントとして識別される事業が5期間比較の間でも色々と入れ替わっている。

 

(2023年3月期)

 

2023年3月期では、「ゲーム事業」と並ぶ2大事業である「ライブストリーミング事業」が2019年3月期では、「新規事業・その他」に含まれていたり、「EC事業」や「オートモーティブ事業」がセグメントとして認識されていたりしていた。

 

 

事業が多岐に渡るので、一目では目指しているところが見えにくいなと感じたが、DeNAのサイトにある以下の図で理解が出来た。

 

 

ゲームやライブストリーミング、スポーツといった「エンターテインメントの追求」と、ヘルスケアやオートモーティブといった社会のインフラを整備する「社会課題の解決」がDeNAの目指す両輪のようである。

 

 

どちらも、人びとの暮らしをより豊かにするものである。

 

ちなみに、「オートモーティブ事業」は、2021年3月期からタクシーの配車サービスアプリであるGOアプリを運営するGO株式会社に事業が引き継がれているが、DeNAの議決権割合が30%弱であるため子会社ではなく関連会社の扱いとなっている。

 

このため、セグメントとしては認識されていないが、DeNAの重要性のある関連会社として、決算情報が開示されている。

 

GOアプリは、頻繁にお世話になっているのであるが、設立以来、未だ多額の赤字の状況のようである。

                              (単位:百万円)

 

今は、サービスを拡大する時期ということで、手数料をあまり取っていないといういことであろうか。

 

システム投資も多額にかかっていることが、想定される。

 

サービスとしては、大変便利で今や無くては困るインフラであるため、是非黒字化して発展して欲しい。

 

ちょっと、馴染みのあるGOアプリの話が先行してしまったが、セグメント別の売上の推移は以下の通り。

 

 

主軸事業である「ゲーム事業」の売上が2022年3月期から、明らかに落ちているのが分かる。

 

(2022年3月期)

 

(2023年3月期)

 

「既存のタイトルを中心とした事業運営となり」というコメントが、流行り廃りの激しい世界だと感じさせられる。

 

当然、新規タイトルも出してはいるんだろうが、大きなヒットにはならずに結果として、既存のタイトル中心の運営となってしまったということだろう。

 

そして、巣籠もり需要があったとしても、既存のタイトル中心の状況では売上は減少してしまうということだろう。

 

そんな中、2019年3月期には、「新規事業・その他」に含まれていた「ライブストリーミング事業」が、「ゲーム事業」に並ぶ事業に数年で成長しているところが、DeNAの会社としての強さの表れではないだろうか。

 

どうしても、流行り廃りが激しく恒常的に業績を伸ばすことが困難とも言える主軸の「ゲーム事業」を補う売上拡大である。

 

 

なお、「ライブストリーミング事業」の営業利益は、2021年3月期、2022年3月期は黒字であるものの、2023年3月期は若干赤字となっている。

 

依然として成長事業ということで、投資先行となっている面もあることが想定される。

 

(2021年3月期)

 

(2022年3月期)

 

(2023年3月期)

 

見方を変えれば、今後の展開がさらに楽しみであるともいえる。

 

「Pococha(ポコチャ)」というライブ配信アプリはこれまで見たことがないが、これを機会に1度見てみることにしよう。

 

ところで、上のコメントにも出てくるが前田裕二氏が代表取締役社長を務めるSHOWROOM株式会社は、株式の一部譲渡に伴って2020年7月にDeNAの子会社から持分法適用会社となっている。

 

仮に子会社であれば、セグメントはまさにこの「ライブストリーミング事業」に含まれるはずであるが、直近の業績はどうなのであろうか。

 

なお、SHOWROOMは重要性のある関連会社には入っておらず、DeNAの有価証券報告書上では情報が取れなかったのだが、SHOWROOM株式会社のHPにて決算公告がされていた。

 

 

あくまで、会計監査人の監査証明が付いていない情報ではあるが、なんとも厳しい状況だ。

 

      (2022年3月期 単位:千円)

 

       (2023年3月期 単位:千円)

 

毎期赤字が発生しており、2022年3月期の純資産合計が1,099,297千円で、2023年3月期の当期純損失が△1,238,168千円だから、2023年3月期に増資をして、何とか債務超過を免れている状況。

 

前田社長の著書である「人生の勝算」は、自分も気持ちが弱くなった時には何度も読みたくなる本であり、前田社長の不屈の姿勢を個人的にはとても応援しているので是非頑張って欲しいものである。

 

関連会社も含め事業が多岐に渡るので、だいぶ遠回りしてきたが、やはり「スポーツ事業」も見ていきたい。

 

「スポーツ事業」は、今やDeNAの主要な事業の一つと言って良いのではないだろうか。

 

また、「スポーツ事業」は、知名度の獲得という点でその影響力は甚大であると言われる。

 

 

DeNAがプロ野球に参入したのが2011年12月であり、「ゲーム事業」の業績の波や子会社の整理等で上下はありありつつも、売上のベースが上がっていることは他の事業への波及効果も大きいと考えて良いのではないだろうか。

 

 

そして、

横浜DeNAベイスターズ・・・野球

川崎ブレイブサンダース・・・バスケットボール

SC相模原・・・サッカー

と3つのメジャーなプロスポーツに携わっていることが分かる。

 

 

やはりコロナ渦で2021年3月期、2022年3月期は大きく落ち込みが見られたものの、2023年3月期にはコロナ前を上回っている。

 

コロナ渦では、無観客であったり、観客数の制限があったりしていたため、売上が減少することはある意味では致し方ないところではあるのだが、2023年3月期で早速売上の回復が見られるところが素晴らしい事ではないだろうか。

 

(2021年3月期)

 

(2022年3月期)

 

(2023年3月期)

 

コアなファンがいなければ、この早期の回復は実現しないだろう。

 

DeNAの南場会長の、スポーツを単なる親会社の知名度獲得を目的とした宣伝ツールではなく、ビジネスとして成立させることを重要視している姿勢が出ているのではないだろうか。

 

以下は、南場会長のスポーツ事業に対するコメントである。

 

 

親会社が資金を拠出する前提でいれば、親会社の業績次第でチーム編成を含めたチーム運営の方針が左右されることとなる。

 

例えば、

①親会社の業績が悪くなり、資金を供出出来なくなったため、活躍するスター選手の年俸がネックとなり他チームへ放出。

 

②応援していたスター選手がいなくなり、ファンが離れる。

 

③活躍するスター選手がいなくなり、チームが勝てなくなる。

 

④スター選手がいなく、勝てないチームの応援にファンが来なくなり、チーム経営が厳しくなる。

 

⑤さらにチーム編成、チーム運営にお金がかけられなくなる。

 

この悪循環を断ち切るためには、常にファン目線に立ち、スポーツ事業単体でビジネスとして成立させることしかないと、南場会長は仰っているのだろう。

 

つまり、

1⃣ファンと選手の目線で常に思考する。

 

2⃣スター選手が育つ。

 

3⃣スター選手が活躍し、チームが勝つ。

 

4⃣スター選手がいて、強いチームの応援にファンが殺到し、チーム経営が上向く。

 

5⃣さらにチーム編成、チーム運営にお金がかけられる。

 

まさに、今のDeNAを見ていると、この変化が起こっていると思えてならない。

 

日本のプロスポーツが、この良いサイクルにのれれば、スポーツ事業はさらに発展していくことだろう。

 

各事業を見てきたわけだが、DeNAという会社は総じて言うと、「ゲーム事業」という直近では少し苦戦はしているが、それでもなお収益は確実に上げているコア事業を柱に、「ライブストリーミング事業」という次の成長性のある柱を始め、社会のインフラとなり得るその他の事業も着々と育てている。

 

その上で、「スポーツ事業」もビジネスとして成り立たせることをある意味、使命として、邁進している将来性があり、かつ社会性も備えている会社であると感じた。

 

他のプロスポーツの親会社の状況は、どうであろうか。

 

スポーツ事業は、順調であろうか。

 

スポーツ事業をビジネスとして成立させようとしている姿勢が、決算書から見られるだろうか。

 

この機会に他社も見てみよう。