横浜DeNAベイスターズ、東京ヤクルトスワローズのセリーグ2球団の親会社を見てきたが、パリーグもせっかくだから見てみようと思った。
どこが良いかと考えていたが、ヤクルトからの食品つながりで、北海道日本ハムファイターズの親会社である日本ハム株式会社にすることとした。
日本ハムと言うと、個人的なイメージはウインナーや贈答用のハム、それから最近ではサラダチキンといったところだろうか。
有価証券報告書を見る前に、HPを覗いたのだが、日本ハムの現在のスローガンは「たんぱく質を、もっと自由に。」らしい。
なんだか、プロテインの販売会社のスローガンのようだなとも思ったが、「肉=たんぱく質」ということで、肉製品に長年携わってきたプライドがあるのだろう。
日本ハムも、ヤクルト同様に「スポーツ事業」というくくりではセグメント認識はしていない模様。
ただ、日本ハムは最近ドーム球場(屋根は開閉式)を新設し、それに伴って周辺地域も含めて盛り上げていこうとしているため、もしかしたら規模が拡大し将来的には変わるかもしれない。
日本ハムのセグメントとしては、国内の食肉事業と、国内の加工事業と、海外での食肉加工事業である。
ウインナーや贈答用のハムのような加工食品のイメージが強かったのだが、国内の食肉の生産・販売を行う食肉事業の方が売上規模としては大きいようだ。
また、直近では海外事業の売上の伸びが確認出来る。
ちなみに、アメリカ、オーストラリア、中国をはじめ、海外18の国で生産・飼育、処理・加工、製造・販売を展開している。
グローバル企業と言って良いだろう。
心配なのは、国内の加工事業の伸び悩みである。
度々の値上げの影響が、出ているのであろうか。
値上げの結果、売上が下がっても利益が確保出来ていれば良いのだが、一旦、営業利益を見てみよう。
うーん。。。
全体としては、まだ利益は出ているので大きな問題はないものの、明らかに利益率が低下している。
やはり、穀物や原油の相場上昇、円安の進行による原材料価格とエネルギー価格の上昇、数々の逆境の中でギリギリのラインのやむ負えない値上げを繰り返していても、賄えない状況のようだ。
海外事業は、これまでも利益率はあまり高くないのだが、2023年3月期の赤字幅は△5,036百万円と全体にとっても、決して小さくないことが目に止まる。
また、国内の加工事業に至っては、値上げ影響により売上も低下してしまっているので、こちらも苦しい。
当然、日本ハムもこの状況を打開するべく、既に動き出している。
(加工事業)
加工事業については、まず適正な利益を確保出来るように、断続的に値上げをしていく。
その上で、マーケティング組織を新設し、新商品の創出と主力ブランドの完全復活を果たすとのこと。
(食肉事業)
食肉事業では、収益性の高いブランド食肉の販売を拡大していくことにより、売上の拡大及び利益率を上げていく方針とのこと。
(海外事業)
海外事業については、製造供給体制を強化し、販売数量の拡大をして利益を確保していく方針とのこと。
食肉事業と海外事業では、なかなか価格転嫁が簡単には出来ない状況も感じられるが、同時に高価格帯の商品の販路拡大の余地は十分にあるとの自信がうかがえる。
確かに、現時点でも継続して利益を確保してきている、1942年創業の歴史ある日本を代表する企業である。
この機会に製品ラインを改めて見直し、適正な価格設定をし、経費削減を図り、より発展していって欲しい。
ここまでで、本業を見てきたのであるが、やはりファイターズの状況についても確認したい。
日本ハムがファイターズの経営権を取得したのが、1973年11月。
日本ハムが子会社化する前は色々と親会社が変わっていたようであるが、日本ハムが親会社になってからは安定していると言えるのではないだろうか。
やはり、思い出されるのがメジャーから戻ってきた新庄選手(現監督)を獲得した2004年に北海道に移転し、北海道の地にプロ野球を根付かせたことである。
それから、世界の大谷選手を輩出したのもファイターズである。
2018年3月期の有価証券報告書には、大谷選手の移籍金約22億円の計上について言及されている。
22億円は日本ハムの業績にとっても十分大金ではあるものの、今となれば、エンゼルスにとって格安だったということだろう。
なお、日本ハムではファイターズ関連事業を、「ボールパーク事業」と呼ぶようであるが、有価証券報告書上でのセグメントは「その他事業」であるため、便宜的に「その他事業」で見ていく。
ちなみに、2020年3月期より前は、「その他事業」の認識すらされていないため、既にコロナ渦である2021年3月期からの推移とする。
2020年3月期の情報がないので、何とも言えないがコロナ影響で、2021年3月期は大きく落ち込んで、そこから2022年3月期、2023年3月期で回復してきている途中ということだろう。
2024年3月期は、売上を伸ばし、黒字化を達成する計画であることが決算説明資料から読み取れる。
日本ハムの、スポーツ事業をビジネスとして成立させようという意気込みが感じられる。
(2022年3月期)
(2023年3月期)
また、2021年3月期から2023年3月期までの間で、新球場を建設している。
(2021年3月期)
(2022年3月期)
(2023年3月期)
総工費、約600億円!!
何と球場にもサウナが付いていて、そこから試合が見られるという。
しかも泊まれるみたいだ。
是非、いつか行ってみたいと思いながら、今は芸能人がサウナに入っているところをYouTubeで見ている。
そして、恥ずかしながら初めて知ったのだが、日本ハムはセレッソ大阪の経営にも携わっているらしい。
他にも株主が多くいるので、ファイターズのような関わり方ではなく、また子会社でもないがスポーツへの志を感じる。
「たんぱく質を、もっと自由に。」取った子供が、スポーツを通して心と体を成長させ、大谷選手のように世界を驚かせる。
大谷選手だって、日本ハムのウインナーやハムを子供の頃、きっと食べていたはずだ。