ogurakaikei’s ブログ

会計・税務及び経済関連(時々雑談)

楽天の決算書を覗く

 

自分が恒常的に使っている楽天のサービスを、思い付きベースであげてみる。

 

楽天銀行、楽天証券、保険、楽天カード、楽天モバイル、楽天市場、楽天edy、楽天Pay、楽天Book、楽天トラベル等々。

 

他にも利用している細かいサービスは、あると思う。

 

各サービスの利用に伴う相乗効果で、ポイントは毎月かなり貯まり、そのポイントも証券投資に使っている。

 

完全に、楽天経済圏の住人と言えるであろう。

 

今、楽天と言えば楽天モバイルの窮地が報じられて久しいが、自分は楽天がキャリア携帯に参入する前のMVNO時代から楽天モバイルを利用している。

 

楽天モバイルの前は、他のキャリア携帯を使用していたが、移行して毎月の携帯料金は3分の1以下になった。

 

確かに、通話の音声の不安定さ、電波の不安定さは感じる。

 

それでも、楽天経済圏の住人からすると解約しようとは全く思っていない。

 

若干、ファンの域ではあるかもしれないが、十分に費用対効果も感じているのも事実である。

 

だから、巷で騒がれているような危機が楽天に起こったら困るのである。

 

これまで、あえて楽天を見てこなかったのは、自分の生活がガッツリ楽天経済圏の中にあるからこそ、あえて事実から目を背けていた面もある。

 

しかし、昨今の報道を見ると、ある程度覚悟をしておく必要もあるのではないかと思い、意を決して楽天グループ株式会社の有価証券報告書を覗いてみようと思う。

 

 

有名な話ではあるが、楽天は1997年に三木谷現会長が、日本興業銀行を退社して創業している。

 

 

セグメントは、楽天市場に代表される「インターネットサービス」、金融サービスを展開する「フィンテック」、そして話題の携帯電話事業を展開する「モバイル」を認識している。

 

 

売上を見る限り、コロナ影響はあまり見られない。

 

話題の「モバイル」を含め、右肩上がりの業績である。

 

ここまでは、全く問題ない。

 

 

問題は、セグメント利益だ。

 

もちろん、その問題セグメントは「モバイル」。

 

全ての利益を吹き飛ばす、大赤字。

 

グラフにしても、赤字額が大きすぎて「インターネットサービス」と「フィンテック」の利益の推移がよく分からない。

 

 

一応、「インターネットサービス」と「フィンテック」だけ抜き出してみる。

 

売上は順調に右肩上がりであった「インターネットサービス」の利益の上下が、気になる。

 

見ていたところ、「インターネットサービス」には、投資事業が含まれており、その株式評価益の多寡でセグメント利益が大きく上下するらしい。

 

大きく「インターネットサービス」の利益額が下がった2020年12月期の1期前である2019年12月期には、75,120百万円の株式評価益が含まれているとのことで、これを加味すれば売上同様に利益額も伸びていることが分かる。

 

(2019年12月期)

 

したがって、「インターネットサービス」には、投資事業が含まれており、株式の評価益が多額に計上される年とそうでない年があり、利益額そのものの推移はあまりあてにならないが、売上及び流通総額は順調に伸びており、利益も確実に確保しているということが分かる。

 

 

そして、さらに堅調なのが「フィンテック」である。

 

売上も利益もキレイな右肩上がり。

 

利益率も高水準で、安定して推移している。

 

 

国からもキャッシュレスの方針が示されて久しいが、楽天カードの取扱高も年々確実に成長してきている。

 

キャッシュレス市場の成長というだけでなく、他のカード会社のシェアを確実に獲得している結果である。

 

 

また、楽天銀行も順調に規模を拡大してきている。

 

楽天銀行は、ネットでの振込手数料も毎月複数回無料となるなど、他のメガバンクと比しても使い勝手の良さは感じるし、何より楽天経済圏でのシナジーが大きいので自分も重宝している。

 

 

「インターネットサービス」と「フィンテック」だけなら、何の問題もないということは周知の事実であるが、改めて確認することが出来た。

 

再掲するが、問題は明らかに「インターネットサービス」と「フィンテック」の利益を全て打ち消してしまう「モバイル」の赤字である。

 

 

最新の情報である、2023年3月期(第1四半期)も同様の傾向である。

 

 

 

「損失は、縮小している」とのことであるが、他のセグメントの利益と比較して、依然として多額の損失と言わざるを得ない。

 

 

売上だけを見れば、順調に伸びているようにも見えるのであるが、投資額を回収するには全く足りていない水準ということである。

 

(2022年12月期)

 

既に設備投資の累計額は、1兆円超。

 

今後3年で、さらに約1兆円の投資が必要とのことであるから、それは大変だ。

 

そして、大体そういった予算は、最終的に予算を大きく超える投資額になることが通例だ。

 

 

2022年12月期末時点にて、グループ全体で4兆円以上の現預金を保有しているが、同時に借入、社債も多額に存在する。

 

この返済を考えれば、決して楽な資金繰りではないだろう。

 

三木谷会長が、本業好調な中であえて「モバイル」に挑んでいるのは、「モバイル」が消費者へのサービス提供の入り口となり、「モバイル」を押さえておかなければ今後の成長の機会を逃す、むしろ衰退するリスクがあると考えたからであろう。

 

それは、確かに合理的な見解であると思うものの、その結果本業が毀損してしまっては元も子もない。

 

どう考えても、このままの状況で突き進むのはリスクが高いのではないだろうか。

 

当然に三木谷会長も、考えてはいるはずで例えば、完全に事業を売却するだけでなく、楽天モバイルの経営を、資金力のある他社と合同で行う等、今後そう遠くないタイミングで何らかの動きがあることが想定される。

 

携帯事業の参入障壁は高く、楽天ほどの会社であっても1社単独では困難ということだろう。

 

三木谷会長なら大丈夫だと思うが、楽天経済圏の一員として、遅きに失することがないように、願ってやまない。

 

Amazonさん、どうですかね!?

 

競業だから難しいですかね!?

 

最後の最後は、今ローミング協定を結んでいるKDDIが候補になるのかもしれない。

 

そういえば、自分は楽天モバイルにする前は、auだったな。

 

それは、それで縁があるということなのかもしれない。

 

ちなみにではあるが、楽天の有価証券報告書からは、「楽天イーグルス」の状況は全く分からなかった。